「阪急環状線」大回りの制限規定が廃止
読者諸兄は大回りと聞けばJRのことが真っ先に思いつくだろう。しかし、私鉄他社でも他経路が観念できる場合がある。例えば近鉄の布施ー八木ー西大寺ー布施などはその典型例で、規則上この環状経路のどこを通ってもよいとされている。そして阪急においても同様な規定があり、しかも独特な規定があったのだが、これがなくなるというお話。
阪急環状線
ここで対象となるのは「阪急環状線」である。現在(2023年4月1日改正:Webアーカイブ)の規定を見ておこう。
19条1号 片道券
旅客が、普通運賃計算経路の連続した区間を、片道 1 回乗車(以下、「片道乗車」という)する場合に発売する。ただし、経路が折返しとなる場合、または環状線を 1 周しさらにこれをこえる場合を除く。40条3項 運賃・料金の計算
運賃を計算する場合に使用するキロ程は、線路が同一方向に連続する限り通算する。ただし、計算経路が環状線 1 周となるときは、1 周となる駅において、旅客の乗車経路が折返しとなるときは折返しとなる駅において、打ち切って計算する。63条 乗車券の使用条件
1項 乗車券は、乗車人員を記載したものを除き、原則として 1 券片をもって 1 人が、1回に限り、券面表示事項に従って使用できるものとする。ただし、定期券は使用回数を制限しない。
2項 前項の規定にかかわらず、阪急環状線内を発着または通過となる場合で、環状線内運賃区間数が 3 区(10 キロ)以上の乗車券(定期券を除く)を所持する旅客は、運賃計算経路によらないで迂回して乗車することができる。64条 効力の特例 前条の規定にかかわらず次の各号に該当する場合は、乗車券を使用することができる。
5号 環状線内を発着・通過する通勤定期券を所持する旅客が、券面に表示された経路以外の経路を、途中下車しないで乗車する場合 (注) 途中下車には、折返し乗車を含む。80条 乗車券の駅名の表示
3号 環状線を 1 周する定期券の発着駅名は「十三-阪急環状線」を表示する。
この中で大回り関連で重要なのは「環状線内運賃区間数が 3 区(10 キロ)以上の乗車券(定期券を除く)を所持する旅客は、運賃計算経路によらないで迂回して乗車することができる。」というところである。つまり、十三ー石橋ー宝塚ー西宮北口ー十三という経路の中で、10キロ以上でないと他経路乗車が許されないということである。
(参考:現行の運賃表 2023年4月1日改定では1区が170円、2区が200円、3区が240円である)
たとえば、十三から170円のきっぷで神崎川に向かうとき、宝塚・西宮北口経由は許されないが、十三から240円のきっぷで、西宮北口まで向かうときは、宝塚・門戸厄神経由が許されることになる。なお、「環状線内運賃区間数が 3 区(10 キロ)以上」がどういう意味かは問い合わせたことがないのでわからない。(例:梅田ー十三ー塚口は10.2キロであるが、環状線内運賃区間数は2区に収まっている。この場合宝塚・西宮北口経由が許されるかどうかはわからない)。
規則改定
ところが、2024年11月1日からこれら規定が変更になるのである。関係するところを抜粋する。
新40条の2(新設)
環状線内を発着または通過となる普通運賃(環状線を1周以上となる場合を除く)は、旅客の乗車経路によらず、最も短いキロ程によって計算する。旧63条2項
前項の規定にかかわらず、阪急環状線内を発着または通過となる場合で、環状線内運賃区間数が 3 区(10 キロ)以上の乗車券(定期券を除く)を所持する旅客は、運賃計算経路によらないで迂回して乗車することができる。
新63条2項
前項の規定にかかわらず、阪急環状線内を発着または通過となる乗車券(定期券を除く)を所持する旅客は、迂回して乗車することができる。
要は今までは阪急環状線内も乗車経路どおりの運賃計算が必要だったがそれが不要となり1、大回り乗車のキロ制限が撤廃されたのである。いやはやこれは意外…運賃計算を最短経路にする、という規定だけで充分な気もするがそれは措いておこう。
- もっともそんな規定をわかって切符を買っていた人は居ないだろうが… ↩︎
参考
過去に私鉄大回りについてまとめているので併せて是非。
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