大手私鉄で「大回り」できる??

2024年4月26日未分類

首都圏や関西圏のJR線で初乗り運賃だけで数百キロ乗車できる通称「大回り乗車」。本来複雑な経路ごとに運賃を計算する手間を省くためのルールを上手く利用した旅の愉しみ方で、JRのHPにもそのことが明記されています。

東京・大阪・仙台・新潟・福岡近郊の指定された区間内で、普通乗車券か回数乗車券に限って、一筆書き経路になればよいというルールになっている。

では同様に大手私鉄でもそのような乗車ができるのか?というのが今回のお話。
ここでいう大手私鉄は国土交通省の統計資料でも指定されている16社とします。また実際に大回り乗車を実施する際はその該当ルールに従い、駅係員に説明できる準備をしておきましょう(実際の旅客営業規則の何条かも併記しておきますので各社HPからご覧ください。)

まず、そもそも路線図からして運賃計算の経路が1通りに決まる、つまり路線が放射状か一直線にしかなっていない会社は京成・京王・京急・小田急・相鉄・南海・京阪・阪神・西鉄 の9社である。というわけで残り7社を順に見ていきましょう。

西武鉄道 可

第 67 条 旅客運賃・料金は、旅客の実際乗車する経路および発着の順序によって計算する。

第 70 条 第67条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間内各駅発着または通過する場合
の普通旅客運賃は、太線区間内の最も短い営業キロによって計算する。この場合、太線内は、経路の
指定を行わない。

西武鉄道株式会社旅客営業規則 2021年3月23日閲覧
https://www.seiburailway.jp/osaka_ryokakueigyoukisoku.pdf

東急電鉄 可

第 67 条 旅客運賃・料金は、原則として旅客の実際乗車する経路および発着順序に
よって計算する

第 70 条 第67条の規定にかかわらず、旅客が、次に掲げる図の太線区間内にある駅発または着もしくは太線区間を通過する場合の普通旅客運賃または回数旅客運賃は、太線区間内の最も短いキロ程によって計算する。この場合、太線内は経路の指定を行わない。ただし、太線区間内にあるいずれかの経路を1周した場合は、実際に乗車した経路のキロ程によって計算する。1周以上となる場合は1周となる駅の前後のキロ程を打ち切って計算する。

2 前項の規定による最も短いキロ程により計算した普通旅客運賃または回数旅客運賃
が他経路のキロ程により計算した普通旅客運賃または回数旅客運賃よりも高額とな
る区間については最も低廉となる普通旅客運賃または回数旅客運賃とする。この場
合においても太線内は経路の指定を行わない。

東急電鉄旅客営業規則 2020年1月31日現在 2021年3月23日閲覧
https://www.tokyu.co.jp/railway/ticket/terms/pdf/eigyou.pdf

東急の場合は最短経路のよりも運賃が安い遠回りになる経路があればそちらを採用する旨が親切にも書かれている。

東京メトロ 可

第43条 旅客運賃は、旅客の実際に乗車する経路及び発着の順序によって計算する。
第45条 第43条の規定にかかわらず、次の区間内各駅発着の場合、又は同区間を通過する場合の片道普通旅客運賃は、
最も短い経路のキロ程によって計算する。
第82条 第45条に掲げる区間内各駅間相互発着又は通過となる普通乗車券又は回数乗車券を所持する旅客は、その区
間内においてはその乗車券の運賃計算経路にかかわらず、う回して乗車することができる。
第83条 前条第1項の規定にかかわらず、次に掲げる乗換駅においては、括弧内の路線相互について乗車する発着駅間
の普通旅客運賃と比較して、発駅又は着駅から当該乗換駅までの運賃が高額となる場合は、別表第2号表に掲げる運賃
による当該乗換駅での乗換えはできない
東京地下鉄株式会社旅客営業規則 2021年3月23日閲覧
https://www.tokyometro.jp/ticket/terms/pdf/ryokyaku_eigyo_200606.pdf

83条の規定は乗り換え改札を通る場合にその駅までの運賃がないと改札を通れないということを書いている。

近鉄 可

第 100 条 環状経路(布施~大和八木~大和西大寺~布施)を部分乗車となる
乗車券で、同経路を発または着もしくは一部通過となる普通乗車券又は回数
乗車券を所持する旅客は、旅行開始後、環状経路内の乗車区間をその運賃計
算経路と異なる他の経路(生駒線、田原本線は除く。)により乗車すること
ができる。

近畿日本鉄道旅客営業規則 2021年3月23日閲覧
https://www.kintetsu.co.jp/gyoumu/kippu/pdf/19_kisoku_2-04-02.pdf

因みに近鉄の場合、旅客営業規則までたどらなくてもHPのもっとわかりやすい部分に書いてます

ここまで4社は線区のどこの駅から乗ってもどの切符でも大回り乗車は可能であると言える。

阪急電鉄 条件付き

第63条2
前項の規定にかかわらず、阪急環状線内を発着または通過となる場合で、環状線内運賃区間数が 3 区(10 キロ)以上の乗車券(定期券を除く)を所持する旅客は、運賃計算経路によらないで迂回して乗車することができる。
阪急電鉄株式会社旅客営業規則 2021年3月23日閲覧
https://www.hankyu.co.jp/pdf/ticket/traveler/01_ryoryaku.pdf

阪急環状線とは十三~西北~宝塚~十三の区間。つまりこの区間を10km以上乗ることができる切符であれば迂回経路、つまり大回りは可能。初乗り運賃では不正乗車になると言える。因みに3区運賃は230円。ただ阪急環状線で10km以上有効な切符ということは例えば大阪梅田や、神戸三宮からであればより高い運賃を支払う必要があると言えるだろう。

東武電鉄 条件付き

第159条 次に掲げる図の太線区間内にある駅発または着の普通乗車券を所持する旅客は、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、
う回して乗車することができる。ただし、う回乗車区間内では、途中下車することができない
(注:本文には「う」に点が振ってある)
東武鉄道旅客営業規則 2021年3月23日閲覧
https://www.tobu.co.jp/railway/ticket/regulation/pdf/book02-4.pdf

ここで掲げられている図の太線区間は小泉線全線(西小泉~館林,太田~東小泉)と伊勢崎線の太田~館林間。ちょうど6の字の範囲となっている。そのほかの区間から乗る場合は実際に乗車する経路での計算(67条)となっている。意味合いからすれば一番JRの大回り乗車に近いと言える

最後に名鉄。

名古屋鉄道 可らしい

名古屋鉄道で該当する可能性のある区間は犬山線、各務原線、名古屋本線の岐阜~枇杷島分岐点、尾西線の一宮~津島、津島線。この区間はほかの会社の環状区間と同様に扱える。
可らしいというのは現在の旅客営業規則を探しても出てこなかったからである。HPで出てくるのはICカード「manaca」の約款集。近鉄のように特に大回りについてや運賃計算について触れられているわけでもない。
参考までに1991年の旅客営業規則を引用したサイトを見つけたのでそこでの記載を掲げておく

第40条 旅客運賃・料金は、旅客の実際乗車する経路及び発着の順序によって計算する。
第42条の2 第40条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間内各駅発着または通過する場合の普通旅客運賃は、運賃計算キロ程が最短となる経路のキロ程によって計算する。この場合、太線内は経路の指定を行わない。

39条を見ると岐阜市内線、美濃町線、田神線、八百津線などが残っているのでなかなか面白い。もちろんわざわざ上の規定を消しているとは思えないのでここでは可らしいという表現にしておきます