伊勢鉄道がJRに移管? 県議の構想を見る

2024年4月26日未分類

三重県議会議員の方のツイートから着想を得て記事を書いている。

つまりは伊勢鉄道・伊勢線をJR東海に移管させるのがよいのではないかという提案である。
確かに国鉄伊勢線の頃は特急南紀4往復・普通列車7往復であったのが、今や特急南紀4往復・快速みえ13往復・普通19往復にまで増え、輸送密度も4000人に迫る勢いである。
輸送密度4000人を超えるのであれば一定程度の数値としての意義(特定地方交通線に指定されないレベルの路線であること)がある。

IMG_6585
▲伊勢鉄道線普通列車(イセIII型)

まず伊勢鉄道の経営状況がどれほどかを慎重に検討する。2018年度の決算報告書を見る。
概要の記載を見るとやはり快速みえが利用者の過半を占めており、次いで普通・特急である。
鉄道事業の収益は5億7101万円、営業費は5億8721万円である。差し引き1619万円が鉄道事業の損失である。関連事業での利益でおおよそ補って、経常損失は90万円の赤字となっている。
また、三重県からの補助金額も出ていて、毎年6000万円程度であるとわかる。ただ、コロナ禍の影響後の2021年度以降のものを見ると、鉄道軌道輸送整備のための補助金で数億円規模の補助金が出ているとわかる。
結果的に2022年度の経常損失は9363万円、そこから補助金等で支援を受け決算自体は1272万円の黒字となっている。

次に、JRに移管した場合の運賃を見てみる。運賃の値下がりは下表のとおりになると考えられる。一応伊勢線に適用される運賃が幹線か地方交通線か両方を想定しておく(幹線運賃の設定のほうが手続きは楽になると考えられる)。なお、JRの欄にあるのは運賃計算キロである。

図1
なお、競合区間として記載しているのは近鉄の運賃であり、特急料金(40キロまで520円、80キロまで920円)は含んでいない。
また、南紀乗車時の運賃・料金についても調べた。基本的にはほとんどの区間も値下げの効果がある(伊勢線に幹線・地方交通線運賃どちらを適用しても差異がなかったので、省略して記載している)。
図2

利用者にとって値下げの効果があるのであれば、自治体側のコンセンサスは取れる可能性はあるといえる。忘れがちだが、伊勢鉄道への出資は県40%、市町村約28%で、伊勢鉄道線の沿線である津・鈴鹿・四日市の各市だけでなく、松阪以南の紀勢本線沿線各市町や、参宮線沿線の町村も出資している(三重県議会資料)。
JR東海のメリットがあるのかはまた考え物である。伊勢鉄道線内の走行車両を考えれば伊勢鉄道から車両使用料を受け取っている立場になり、どれほど増収等につながるかは不明である。ただ、増発のしやすさや、対近鉄戦略の立てやすさ(増発のしやすさなど)を考えればメリットはあるのだろうと思われる。普通列車の車両運用等々をどうするのか(キハ25にそろえる?)はまた考え物であるし、そのほかの調整も必須になるだろう。

これらを踏まえると、JR東海もやすやすと受け入れるとは考えにくい。上下分離にして、JRが第二種鉄道事業者になることくらいまでは考えられると思われる。鉄道再構築事業を実施して事業構造を変更する形が一番速そうである。