夜行新幹線は法令で禁止←ほんと?

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よく言われる言説として「夜行新幹線は法令上できない」みたいな言い方がある。すこし詰めて考えたい。e-Govで「新幹線」「午前六時」あたりで調べた結果がこれである。

e-gov検索結果

環境基本法16条

第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2 前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事務は、次の各号に掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該各号に定める者が行うものとする。
一 二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって政令で定めるもの 政府
二 前号に掲げる地域又は水域以外の地域又は水域 次のイ又はロに掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該イ又はロに定める者
イ 騒音に係る基準(航空機の騒音に係る基準及び新幹線鉄道の列車の騒音に係る基準を除く。)の類型を当てはめる地域であって市に属するもの その地域が属する市の長
ロ イに掲げる地域以外の地域又は水域 その地域又は水域が属する都道府県の知事

環境基準の設定について、都道府県を跨がないもののうち、航空機・新幹線に関しては都道府県知事が定めるという分掌の規定である。

環境影響評価法施行令 別表第一 三

(法2条2項1号ハ 環境影響評価法上、第1種事業として必ずアセスメントを行うこととされているもの)

イ 全国新幹線鉄道整備法第4条第1項に規定する建設線の新設の事業
ロ 全国新幹線鉄道整備法2条の新幹線鉄道に係る鉄道施設の改良(本線路の増設、地下施設、高架施設への移設)の事業
ハ 新幹線鉄道規格新線(スーパー特急)の建設の事業
二 新幹線鉄道規格新線に係る鉄道施設の改良
ホ 鉄道事業法による普通鉄道の事業(長さ10km以上)
へ 普通鉄道に係る鉄道施設の改良の事業(長さ10km以上)
ト 軌道法による新設軌道の建設の事業(長さ10km以上)
チ 新設軌道に係る線路の改良の事業(長さ10km以上)

要は新幹線はアセスメントやってくれということである。

環境基準を見る

じゃあ関係しそうなのは環境基準だろうということで調べると…

新幹線鉄道騒音に係る環境基準について(昭和50.7.29 環境庁告示第46号)

昭和50年7月29日環境庁告示46号(平成5年環告91号、平成12年環告示78号で改正)
註:平成5年の改正はホン→デシベルへの修正と計量法改正に基づく騒音計の基準の変更、平成12年改正は省庁再編での条文操作のようである。

 公害対策基本法(昭和42年法律第132号)第9条の規定に基づく騒音に係る環境上の条件のうち、新幹線鉄道騒音に係る基準について次のとおり告示する。
 環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の規定に基づく騒音に係る環境上の条件につき、生活環境を保全し、人の健康の保護に資するうえで維持することが望ましい新幹線鉄道騒音に係る基準(以下「環境基準」という。)及びその達成期間等は、次のとおりとする。

第1 環境基準

1 環境基準は、地域の類型ごとに次表の基準値の欄に掲げるとおりとし、各類型をあてはめる地域は、都道府県知事が指定する。

地域の特性基準値
I(主として住居の用に供される地域)70デシベル以下
II(商工業の用に供される地域等)75デシベル以下

(注)1,2略

3 1の環境基準は、午前6時から午後12時までの間の新幹線鉄道騒音に適用するものとする。

第2 目標達成期間

目標達成期間を記載しているが、現在の新幹線は既設・新設共に達成が求められている。

第3 騒音対策の実施方針(略)

…あれ、よく見てみると「6時から24時は」70/75デシベル以下と定められているが、それ以外はどうなのだろうか。環境基準等の設定に関する資料集を読んでみよう。

(昭和50年3月29日・中央公害対策審議会騒音振動部会特殊騒音専門委員会「新幹線鉄道騒音に関する環境基準について(報告)」より)(抜粋) 元リンク
1.指針設定の基本方針
(前略)なお、本指針は、新幹線鉄道が午前0時から午前6時までの間においては運行されないことを前提として設定したものである。従って、将来、深夜運行が実施されることとなった場合には、本指針は見直す必要がある。

(同「新幹線鉄道騒音に関する環境基準の基礎となる指針の根拠等について」より)
3.指針値について(抄)
次に、時間帯によって基準値に差を設けるという点については、今回は以下のように考えた。
ア 前述の住民反応調査の結果によると、表-2に示されているように、睡眠妨害に関する住民の訴え率は、むしろ、他のものに関する訴え率よりも低いという結果になっていることから、朝6時から夜11~12時までという現在の運行状況を前提とする限りにおいては、差し当たり夜間の指針値を別に設けないこととした。
イ 住民反応調査の結果によると、時間帯の中では夕刻から夜間(19時~22時)にかけて新幹線鉄道騒音をうるさいと感じている住民が多いが、この時間帯における影響が新幹線鉄道騒音に対する住民の訴え率に全体的に反映していると思われる。上述の指針値はかかる訴え率に基づいて定めたものであるところから、差し当たり時間帯を区分して指針値を定めないこととした。

つまり、「新幹線は6時から24時までしか走っていない」ということを前提にした規制であり、24時から6時については「走っていないから特に決めていない」ということになる。

当面の結論

色々調べてみた結果、夜行新幹線が実施されていないのは慣行・実務上の必要性によるものにすぎず、法令上の制限はなくむしろ法令が事実に追いついているだけに過ぎないと評するのでよさそうだ。