あいの風 パターンダイヤ導入を考える

2024年4月26日未分類

あいの風とやま鉄道といえば北陸新幹線開業に伴う分離によって生じた第三セクター線だが、パターンダイヤの計画があるといわれている。今回は少しそのことを考えたい。
新聞で出ている報道を見てみるとこの通りである。

・2027年度の全線(石動ー泊)導入を目指す
 2024年の北陸新幹線敦賀開業でダイヤ制約が緩くなる
 (金沢駅に乗り入れる特急がなくなるため)
・現状設備では高岡駅以東で対応可能
・実施には石動駅(小矢部市)に折り返し設備が必須
 (現在では金沢駅折り返し)
・ただ、折り返し設備のめどがつかないために高岡ー富山など段階導入になりうる
 整備に3億8000万円がかかると試算
 また、小矢部市が朝夕の輸送増強を求めている
・パターンダイヤは30分間隔が念頭も、先行導入時は40-45分間隔も検討になっている
・2024年にもIRとの調整に入る
 富山県内のダイヤであってもIRの車両を利用するため
・実施時間帯は9時から15時
・日中時間帯のみならず夜間(20~22時台)も検討に入る
・朝夕は駅ごとの利用者数の差が大きく、実施は困難
・現状旅客の本数を増やすと貨物線路使用料が落ちる

実際ダイヤをみてみると
石動ー高岡間:昼間に30分間隔のパターンダイヤを実現しようとすると5往復程度の増発が必要といえる。朝夕時間帯は1時間に2本程度ある。
高岡ー富山間:昼間に1往復を増発し、ダイヤの調整さえすれば30分に1本のダイヤを実施しうる。16-19時台も20分に1本程度のダイヤとなっている
富山ー泊間:昼間に30分間隔のパターンダイヤを実現しようとすると4往復程度の増発が必要といえる。朝夕時間帯は1時間に2本程度ある。
となっている。確かに高岡ー富山間だと導入はかなり現実的といえる。
どうしても新幹線開業に伴って2024年に金沢駅に乗り入れる特急が40往復ほどなくなることや、金沢駅を通しで運行する列車が出てきたりとか、ハピラインふくいの開業(そして福井県内での増発の検討)などの事情を踏まえるとダイヤの検討は複雑さを増す。乗り入れ範囲がどこまでどうなるか、皆目見当もつかない。

また、第三セクター線特有の事情で、「アボイダブルコスト」との葛藤もある。つまりJR貨物が同線区を通過する際に「増加が避けられない費用」だけをJR貨物が支払うという関係になっている。旅客列車本数を増やすとこの線路使用料が下がるというルールになっていることも増発のネックとなっているようである。

もう一つの問題は、貨物線路使用料というのが収入としては大きいんですが、実は旅客の本数を増やすと貨物線路使用料が落ちるという現象が起こってしまいます。これは貨物の考え方としては正しいのですけれども、ただ、どちらかというと、旅客本数を増やすというインセンティブがないといいますか、逆効果になってしまう。増やしたら貨物線路使用料が落ちてしまうという部分があって、これは国に対して何とか見直してほしいと今言っているのですが、そういったことも考えなければいけないということもあります。(引用:富山県議会議事録からあいの風とやま鉄道社長の発言)

石動駅の折り返し設備設置についても、小矢部市は「朝夕ラッシュ時の列車増強のため」、会社は「昼間パターンダイヤのため」を念頭に置いており、設置に向いて話が進んでいない。あいの風が独力で行える設備投資でないことが前提となっているといえる(株主だからどうこうという話ではなさそうである)。

参考:
富山県の持続可能な公共交通のあり方を考えるプロジェクトチームが立ち上がりました
あいの風鉄道、日中に等間隔運行へ 27年度開始目指す パターンダイヤ検討(北國新聞)

あいの風パターンダイヤ 折り返し設備めど立たず 全線導入の条件(北日本新聞社)