氷見線・城端線 移管へ目途がついたか

2024年4月26日JR各社/三セク国鉄

氷見線・城端線のJR西日本からあいの風とやま鉄道への移管合意へ最終調整の段階に入ったと報じている。本稿では最終合意に至る経緯を追いつつ、類似線区への影響も観たい。

城端・氷見線の「あいの風」移管、正式合意へ23日協議 新田知事「最終調整」(北日本新聞社)

報道でいう協議会は富山県が設置している「城端線・氷見線再構築検討会」のことである。この協議会は地域交通活性化法に基づく協議会である。
この検討会で「鉄道交通再構築実施計画」が自治体・事業者共同で策定され、国土交通大臣の認定を得れば、ワンストップで事業許可を取ることが出来るほか、「公有民営」での上下分離が容易になる。更に税制特例などの優遇措置も得ることができる。主な適用例は若桜鉄道、伊賀鉄道、京都丹後鉄道、福井鉄道などである(このほどの法改正でJRの赤字路線も対象になりえるようになった)。

この検討会に先立ってLRT転換が検討されていたが、結果的には「新型鉄道車両」の導入が目指されることになった(資料)。そのほかIC化、増発、直通の検討も取り組んでいるとしている。
7月30日実施の第1回の検討会では砺波市から「新型鉄道車両」の資料が出されている(資料)。例示されているのは電気式気動車(GV-E400)、蓄電池駆動電車(EV-E301、EV-E801)、ハイブリッド気動車(キハE200、HB-E210)、水素車両(FV-E991)である。この会議によって高岡駅でのダイヤの工夫も問題となるので、あいの風とやま鉄道が重要なステークホルダーとして自治体、JR(金沢支社長)によって確認されている。
9月6日の第2回検討会ではあいの風とやま鉄道も会議に加わった。地域交通法の改正(10月1日施行)も見据えての議論、法改正の概要を触れたうえで、あいの風とやま鉄道からは経営を引き継ぐ条件が示された(資料)。

(1)現路線とは区分経理した上で、現路線の経営に支障が出ないよう、城端線・氷見線の赤字補てんの保証を行うこと
(2)運転士や施設、電気、車両など技術系の要員を確保するため、JR 西日本の社員が一定期間、当社に出向していただくこと
(3)経営移管前に、JR 西日本において、レール、まくら木、分岐器、道床などの本格的な再整備を行っていただくこと
(4)指令や駅運転のための設備整備、券売機の整備も経営移管前に行う必要があり、当社がその整備を行う場合は必要な財源を確保していただくこと
(5)仮に両線の直通化を行う場合、連動信号の再整備など高度な知識・技能が必要となり、当社は技術的にも人員的にも能力不足であることから、JR 西日本の全面的な支援が不可欠であること

あくまで一般的な交通政策としてあいの風に入ってもらうことにメリットがあるという話である。なお平成28年の調査によれば直通化の実施に30億円かかるとのことである(事業主体が変わらない前提)。また、JRからも「現行のリソースを大幅に上回るような増発はし難い」との発言が出ているし、更に「地域の皆様があいの風とやま鉄道様が運営主体として最適とおっしゃるのであれば、弊社としても全く異存はございません。」とまで言っている(議事録)。

そして今回の報道が出て、10月23日の検討会で正式合意に至るということになる。そのまま鉄道事業再構築実施計画が年内に定められれば2024年度中に種々の整備・設備投資が行われて25年春には移管もあり得ない話ではない。

【追記】やはりあいの風への移管へ県・JR・あいの風・4市が合意。
JR城端線・氷見線 あいの風とやま鉄道への引き継ぎ合意
10年以内に経営移管とのことである。

ここで、現状の氷見線・城端線の輸送密度などを挙げておく。最近の輸送密度や営業係数の開示対象にはなっていない。
【輸送密度(2022年度)】城端線:2481人 氷見線2157人
【輸送密度(2019年度)】城端線:2923人 氷見線2498人
【旅客運輸収入(2022年度)】城端線:2.48億円 氷見線1.40億円
【旅客運輸収入(2019年度)】城端線:2.95億円 氷見線1.54億円
最高速度】ともに85キロ
管轄】金沢支社北陸広域鉄道部(七尾線・大糸線も管轄)
【駅数・営業キロ・交換駅など】
城端線:29.9km、高岡・城端を除き12駅、うち交換駅は5駅(城端駅は1面2線)
 業務委託1駅(砺波)、簡易委託4駅(福野、福光、戸出、城端)、新高岡は新幹線側が有人
氷見線:16.5km、高岡・氷見を除き6駅、うち交換駅は3駅(氷見駅は棒線)
 業務委託1駅(氷見)、簡易委託3駅(伏木、越中中川、雨晴)
【運転本数】
城端線:21往復(土休日1往復運休)、うち平日朝2本は富山まで直通
氷見線:18往復
このほか臨時列車「べるもんた」が土日に運転(土曜は城端線、日曜は氷見線)

【以下10月31日追記】10月23日の会議の結果を踏まえて記載する。
あいの風から呈示された条件への対応としては
・城端線、氷見線への経営負担は沿線4市で行う。富山県並行在来線経営安定基金は充当されない。
・そのほかについては全面的に応じることが記載されている。
となっている。
城端線、氷見線については、昼間の列車の平均所要時間や、1列車あたりの平均両数(朝・昼間・夕方に区分して整理)が掲載されている。また、氷見線・城端線相互の平均接続時間も記載されている(平均して20~24分ほど)。
議事録はまだ掲載されていない。