京急 遠距離で「値下げ申請」 なぜ?

2024年4月26日未分類

京急電鉄は、2023年10月に実施予定の運賃改定を国土交通大臣に申請した。
その内容が少し妙な気もするので詳しく見ていく。

空港線を抱える京急電鉄はやはり利用者の減少の影響が大きく、2019年度以前の水準への回復が難しいとしている。利用回復の見通しが立たず、さらに今後5年間で1300億円程度の設備投資が必要であることなどを理由としている。

その改定価格が不思議なことになっている。以下10円単位運賃で説明する。
40kmを超えるところでは値下げとなっている。品川からだと金沢八景より向こうなどが値下げとなる。

km 現行 申請 差額
~3 140 150 10
~6 160 180 20
~10 200 230 30
~15 250 280 30
~20 290 320 30
~25 320 350 30
~30 370 410 40
~35 430 460 30
~40 500 510 10
~45 580 570 ▲10
~50 650 620 ▲30
~55 730 670 ▲60
~60 800 710 ▲90
~65 870 740 ▲130
~67 950 740 ▲210

改定は上記の通りで、「なるほど遠距離は値下げか」となるが、値下げの認可申請というのは実は奇妙な話である。(値下げ理由は新たな需要創出と沿線活性化としている。また、通勤定期も同様の改定、通学定期は据え置きである。)

ご存じの方も多いと思うが、鉄道運賃は上限認可方式である(※割引きっぷの話はいったん忘れておいてほしい)。基本的には上限運賃と実施運賃(実際に我々が払う金額)は同じであるが、上限以下であれば届出で実施運賃を決めてよいことになっている。北総鉄道がこの間値下げしたのも、認可ではなく届出である。もし、北総が前の運賃に戻したいとなれば届出で足りるということになる。
(なお、実際に、京急電鉄も品川ー横浜間で認可を受けた後には350円ではなく320円で届出する予定などとしている)

となると、41km以上の運賃を現行と同じ運賃で認可申請を出して、値下げとして届出すればいい話だろう…と思ってしまう。

しかし、認可のためには法律で『「適正な原価に適正な利潤を加えた額」が認可後の運賃による総収入を超えてはならない』とされている(鉄道事業法16条2項)。要は値上げ(だけ)で黒字にはできないという意味である。
改定しても向こう3年の収支見込が計算上赤字になるようにしなければならないとしている。

今回の京急電鉄の収支率は、2024~2026年度で
現行運賃のままだと、収支率90.4%・223億円の赤字
申請運賃だと、収支率99.4%・14億円の赤字
となる。

となると、実施運賃だとすれば赤字でも上限運賃で計算したら黒字になるとまずい…だから泣く泣く値下げ申請することとなったといえる。

参考までにどれくらい差があるのかのグラフはこんな感じ(段々グラフの書き方がわからない…)
図1