リニア どこまで便利になるのか?

2024年4月26日JR各社/三セク国鉄

リニア中央新幹線は2027年に品川ー名古屋間が、2037~45年に名古屋ー新大阪間の開業が予定されている。結局どれくらい便利になるのかと言うのが今回のお話である。名古屋開業と全線開業の段階で分けて考えることになる。

まずは運賃について。JR東海によれば「リニア中央新幹線開業後の具体的な運賃・料金体系について、今後、リニア中央新幹線の運行形態、東海道新幹線との連携、乗り継ぎ、さらには開業時期の経済情勢や他の競合する交通機関の状況などさまざまな事柄について検討したうえで、開業が近づいた時点で決定します。」とのことである。一説によればのぞみの700~1000円増し程度に設定されるとされている。リニアに関しては東海道本線に沿って線路がないわけで、営業キロの設定も大きく異なる(在来線より短くなる)とすれば、特急料金に相当する部分は大幅に高くなるものと予想される。なお、過去の説明会で東京・大阪間15,000円を念頭にしている(平成21年現在)。

また、新幹線との乗り継ぎについても名古屋開業の時点では東京大阪間の移動を鑑みれば通し運賃、料金として反映されることは間違いないだろうが、他方で全線開業時に山陽新幹線との通し特急料金になるかだとか、そもそも在来線との特急の乗継割引(在来線の特急料金が半額)が残るかは考える余地のあることろである。隣接するJR東日本、西日本の意向にもよるだろう。ただ「新たな販売システム(検討中)により、「駅」にはきっぷを販売するスペースを設けていません。」とあるから、今までのJRの在来線・新幹線の運賃・料金体系から切り離される(一切通し計算をしない)可能性も十分考えられる。

ついで乗車までの流れを考えてみる。これもまたJR東海のHPによれば、在来線ホームからして品川駅は40m、名古屋駅は35mの深さとなる。基本的に在来線なり私鉄なりから乗り継いで利用し、また乗り継いで目的地に向かうだろうから、どれほどの乗り継ぎの時間がかかるかを推定してみよう。
例えば名古屋駅の場合、近鉄のホームからあおなみ線の改札まで17分、あるいは新幹線から近鉄・名鉄までが15分というところが最も長いものである。実際の乗り換えはそこから改札を越え、ホームに向かうわけだからおおよそ20分くらいかかるものが最長だろう。
しかしこれだけで済まなそうである。それはまず1つに所持品検査の実施の可能性がある。またJR東海のFAQをみると「手荷物検査の有無については、利便性を損なわない形で、これまでより、安全を確保する方法を考えていきます。」とある。必ず実施するとまでの確証はないが、裁判所の入口くらいの金属探知機を通す可能性は十分ありそうだ。また、リニアの試乗会の様子を見るに、磁気の関係から大がかりな搭乗口を設けていたりする。これらのことを考慮すると名古屋駅や品川駅、新大阪駅での私鉄・在来線・新幹線と乗り継ぎは最大で30分ほどかかりうると思われる。それだけ時間がかかると仮定すると名古屋開業時にどれほど時間短縮が図れるかは未知数といえる。

中間駅に関してもいろんな話がある。岐阜県駅は美乃坂本駅、長野県駅は飯田線との交差箇所、神奈川県駅は橋本駅に設置されることになる。中間駅は地上ないし地下であり、地下に関してはB3階に造られる予定である。少なくとも在来線同士などの乗り継ぎよりも時間がかかることは念頭に置いた方がよさそうだ。なお中間駅は完全無人になるわけでなく、出札など営業専門に当たる人がいないというだけの予定である。

次に運転本数だが、現在のぞみのダイヤが最大毎時12本、定期列車は4本の設定である。他方で、平成21年の報告書(参考:中央新幹線(東京都・大阪市間)調査報告書の提出について および 第7回 交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会)では速達列車毎時7本、各駅停車が1本を想定している。実際これ以上の本数を予定する必要性も出てくるだろうけどそれはリニア新幹線が安定・定着してからの話だろう。
他方、東海道山陽新幹線の本数はどうなるだろう。のぞみの定期4本、臨時8本という体制から臨時列車の分のスジはこだまやひかりに置き換えられるだろうことは大体の予想となっているところである。
名古屋開業時に九州新幹線の列車が乗り入れたりするのかということも考えてみたい。つまり現在であれば東京から新大阪か博多で乗り換えればいいところを乗り換え回数が増えてしまうのかなどということは気になる話である。8両編成の新幹線が名古屋まで来るとも思えないが、利便性の低下は一時的であれ懸念されるところ。一時的な利便性低下だけで済めばいいが、それでほかの交通手段が取られるようになっていくと全線開業時に折角高速化したのに、となりかねないだろう。

上記のような検討は当然JR東海や関係各社はしているはずで、そのための投資計画も練っているはずである。もっとも工事が遅れていること(主に外因)でどうしようもなくなっているが。。。