ICカード vs QRコード 淘汰が進むのか?

2024年4月26日ICカード関係

6月の末に気になる記事を見つけてそのままほったらかしにしていたので今執筆している。
曰く、ICカード決済はQRコード決済に完敗したというのだ。

主張はこの通りである。一番下までスクロールして読んでから戻ってきても良いだろう。

①2021年、QRコードの決済取扱高(7.3兆円)はSuicaなどのプリペイド型電子マネー(6兆円)を超えた。※クレジットカードは80兆円
②PayPayやd払いなどの利用者を見るに日本人の4割以上はQRコード決済を日常的に使っている。
③SuicaエリアはJR東日本の駅中半数でしか使えない
④ICカードの使える場所は駅ビルの店舗かコンビニくらいしかない
⑤広島電鉄ではICカード「PASPY」を廃止する
⑥ICカードの企画(原文ママ)が乱立している。(QRコードも同じと指摘)

どうも記事の締めにタイトルの割にして勢いがないことを見る限りなんだか怪しい雰囲気もあるが、かなり失当と言える部分を含んでいるだろう。

①に関して。まず電子マネーの決済額としては確かに抜かれたというのは間違いないだろう。しかし交通系ICカードの担う役割はその他に定期券としての役割もある。後でも書くが電子マネーとしての役割が全てではない。(クレジットカードは大型決済も含むのでQRにしろICにしろ戦える相手ではない)
②これは納得。
③半数の駅でしか使えないが、半数の利用者しか使えないと同義ではない。筆者も言う通り利用者の多い地域から導入しているからである。そもそもSuicaの導入のメリットを考えると、自動改札での迅速な検札が第一義である。いちいち定期券を人力で確認していたらどれほど時間がかかるかということを想起すればわかる通りである。これに対して長距離の移動にはそこまで向いていない(きっぷであれば経路の指定ができるが、Suicaだとわからない、あるいは残高や運賃・料金システムの問題など)。特に定期券の乗り越しなどについては特に強みを持っている。間に定期券区間を含み定期券区間外の駅を行き来する場合でも一瞬で残高引落を行うわけである。
QRコード決済に比べて導入コストが高く広まらないのは確かにそうであるが、あくまで大量の人間を改札でさばくという目的から来ていることを考えてほしい。QRコード決済の読取時間でもし改札機を通すとすればそれはもう、、、大行列である。(QR券面を表示する時間なども考慮した方が良いだろう)
更にSuicaに関しては改札システムを別途設ける話も出ている。サーバで集約して運賃計算をするなどという算段である。システム障害に弱くなるのは確かだが、試みとしては進むべき方向性なのだろう。
北東北3県における Suica ご利用エリアの拡大について(JR東日本、2021年4月6日)
④確かにPayPayの加盟店数が400万店近い。それに比べると、全国共通ICカードの加盟店数はその1/3程度と言えよう。
⑤⑥ICカード事情複雑怪奇と言いたげである。
しかし一日の長というべきか、主要10種類のICカードは相互利用が可能になっている。更に地方独特のICカードが廃止されるのは、確かに事情があるのだが、SuicaやICOCAが地方連携カードを作るようになったし、簡易IC端末の導入準備も進んでいる。

他方QRコードの方は各サービスごとに掲示が必要だし、JPQRとやらの統一規格の話ももはや立ち消えの印象である。

以上の観点から見ると、(今後20年くらいに関して)少なくとも交通利用についてはICカードの存在意義は早々薄れることはなく、小売においては更に使い分けが進んでいくだけに過ぎない、というのが結論ではないだろうか。
オレンジカードの発売が1985年、Suicaが2001年である。そろそろ新しい決済手段が出てきても不思議ではないと言える。それがQRコード決済なのか、クレカのタッチ決済なのかは今後の群雄割拠の進み方次第であろう。。。

参考(Yahoo!ニュースと本元の記事):