「鉄道insight」創刊号を読む

鉄道ジャーナルの後継誌と意気込んで出版された「鉄道insight」がようやく届いたので読んでみた。今のところ書泉とAmazonのオンデマンドプリントでの販売となっており、今回は後者で購入した。
鉄道ジャーナルやその他の論壇でお見掛けする方々が書かれているだけあって基本的に文章の質は高いものの、Wordファイルをそのまま印刷したかのような画像の粗さや、画像と本文の間が空いていないなど、編集自体の細やかさが足りないなという印象を受けました。今のところ、鉄道ジャーナルの特集の旅行記がない版という感じで、筆者が増えて行けば毎月質の高い記事が揃うのでは、と思うところです。
…が、一つ見過ごせない記事があったのでこれだけははっきりと批評しておく必要がある。北村氏の「北陸新幹線米原ルート、所要時間を試算したら小浜ルートより速かった!」である。要は「国交省は小浜ルートを正当化するために米原ルートの所要時間の算定を緩めにしている!米原駅で新大阪直通すればもっと速く(他の記事では安く)できる!」というもので、鵜飼基地から新大阪間を複々線化し、米原駅の配線を変更しさえすれば線路容量は問題ない、費用も建設期間も安上がりという主張である。
しかしこの記事が忘れていることとしては、
①JR東海・JR西日本がこの説得に応じる可能性があると言えないこと
②米原駅の配線変更について、その工事を継続しながら現行ダイヤやそれに準ずるダイヤを施行できるという前提であること
③敦賀~米原間の建設費を1兆円と(かなり安く)見積もっていること
④東海道新幹線のダイヤ乱れのことを一切考慮していないこと(大雪の折、関ケ原越えができないときに米原駅のホーム・本線を満線にして対応することがある)
⑤新大阪乗り入れに別途車両を仕立てるとしているが、加速度性能や最高速度差を埋める車両にかかる経費等を全くもって忘れている(加速度を例にすればN700Sは2.6km/h/s、W7系は1.6km/h/sである。)。それを含めた採算性を検討しているようには見えない
⑥なぜか富山県知事が米原ルートを推していることになっていること(少なくとも現時点では推しているとすれば事実を曲解していることになる、産経新聞参照)
などであろうか。着工5要件を見たことがないのではとさえも思われるくらいである。
ともあれ、今後記事のクオリティは、良質な筆者が出てこればなんとでもなるのだと信じている
ディスカッション
コメント一覧
えっ
これだけ立派な記事を書いた本なのにコメント薄っぺらくない?
なんかかえって失礼。だからあなたの記事が雑誌になることはないんでしょうけれども。
お時間を割いて頂いたにも関わらず記事にご満足頂けなかったことについては申し訳ないです。しかし、本稿の意図は(あまりの事実誤認があった故に1件触れたものの他は)個別記事への批評ではなく、むしろ鉄道insightというプロジェクトが向かおうとする方向性に対しての期待を述べたものであることを踏まえていただきたく存じます。
なお、最後の一文については、日々鉄道趣味者の端くれとして記事を書き続けている私に対して差し向ける言葉として極めて不当であると判断した旨、申し添えます。