京阪運賃改定の資料を読む

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京阪電車の運賃改定は申請通り認可されたわけだが、その運輸審議会での審議資料・パブコメを(さらっと)読んでみよう。いかんせん量が多く、そのすべてを消化しきることができていないことはご承知いただきたい。

諮問関係事案の審議状況(令和6年)

輸送量・運賃・コストの推計について

運賃改定のときには収入と支出を見るわけだが、輸送量の推計は収入の推計に直結する。定期外の輸送人員は沿線人口(15歳以上)の変動に合わせて推計するという手法を採っている。定期輸送は大阪・京都の就業者数に合わせて推計している。更に訪日外国人輸送と大阪万博の輸送人員を加味するためにこれをさらに分けて計算している。万一訴訟で争うならここの計算を突く位しかないのでは?運賃推計はここに収入単価を掛け合わせるという形である。

他方コストについては、大手私鉄どうしの比較で適正コストを算定する方式を採っている(ヤードスティック方式)。この際、物価上昇率と激変緩和措置(平成9年以降初めての運賃改定となるため。平成12年改正算定要領についていた別紙を参照)を加えている。

激変緩和措置については下記の画像を参照(引用元)。今回は①に該当するものと思われる。

京阪の合理化策

京阪電車の経営努力も鉄道局資料に仔細に掲載されている。輸送人員が4割減、運賃収入が3割減でも運賃水準を維持できているということはよく考えれば凄いことではあるのだが…

合理化策として①ワンマン運転、②駅業務の効率化(他駅サポートシステム)、③コロナ禍でのコスト削減を取り上げている。これによれば、鉄軌道への従業者数は1/3以上減らすこととなり、営業費用も削減出来ているとのことである。一方で需要喚起策として、①中之島線の整備、②プレミアムカー、③沿線住環境整備を挙げている。プレミアムカー以外は成功しているとは思えないのは気のせいだろうか。

そして今回の運賃改定の主たる理由は設備投資=減価償却費の増加とのことである。車両については「車両は、約 50~60 年使用する方針としており、長寿命化のため、概ね供用開始 30年経過時にバリアフリー化を伴う大規模リニューアルを実施することで、利便性向上と一定水準の安全性を保持させてき」たとあるとおり、現状経年50年以上の車両が63両(京阪線全体で607両)あるということからその更新を行うとしている。その際の費用が67両で113億円を見込んでいる旨明記されている。その他、コロナを受けて設備投資を抑えてきた(2021,22年度だけ特異的に少ないことが明記されている)

沿線の不動産開発についての具体例としてくずはモールが挙げられており、樟葉駅の利用者数は1日平均3600人の増を見せているとのことである(樟葉駅の2023年の利用者数は47,388人)。

大津線について

大津線の状況についても、収益20億円前後に対して毎年10億円以上の赤字を垂れ流していることが記されている。そのため、運賃改定幅は概ね同じ(1.15倍して10円単位切り上げ)であるが、初乗り運賃も同様の改定幅としているとのことである(京阪線は初乗り2区までは1.15倍のうえ10円単位切り捨てにし激変緩和を行っている)。

パブリックコメントについて

パブリックコメントは(最近の報道のことを思えば荒れておらず)20件となっている。その中で一部路線の廃止を主張する荒唐無稽な意見も見受けられた一方で、共通した意見が複数あった。それを取り上げると、

・優等停車駅でのエスカレーター停止
・車内LCDの撤去(京阪特急8000系でも一部撤去のうえ千鳥式になっている)
・バリアフリー設備に対する要望(駅のトイレ廃止、出口閉鎖、駅名標の非電照化)
・塗装に対する意見(鋼鉄製車両以外でもフル塗装である)

あたりとなっている。また、バリアフリー料金制度についての取扱い(当該加算料金での設備計画や、減価償却費の扱いなど)についても複数見受けられた。

エスカレーターについて

パブコメでも指摘があったエスカレーターについて、京阪としては他のエレベーター・エスカレーターで代替可能とみているとのことである。なお、1基につき100万円の経費節減効果があるとしている。

離職率について

離職率について、5年以内離職率が、33%となっており、非常に高くなっている。それに向けた対応・業務環境の改善を行っていることを記載している。