JR閑散線区の趨勢を考える(前編)

2024年8月24日未分類

JR東海を除く旅客5社はそれぞれ、線区別輸送密度と営業係数を開示している
JR西、東、九は輸送密度2000人未満、JR北海道、四国は全線区の開示をしている

2020年度以降の営業係数は新型コロナウイルス感染症が影響を受けている。2019年度以前から既に厳しい経営状況であったところ、移動需要減少を受けて大打撃を受けたと言える。
そうでなくても特にJR北海道では廃線、線区の整理が実施される。黒字線区による填補が利かない状態であるために赤字線区の整理は必至だ。

しかし”不振”線区はこれまで、国鉄転換時のものとは様相が違うと言える。

転換された特定地方交通線は、輸送密度4000人未満の線区から①ピーク時の輸送密度線区②代替交通機関の不備ある線区③長距離利用が一定程度想定される線区④貨物輸送密度が一定程度ある線区を除いて廃止・三セク転換を実施している。

そして廃止は三段階で進められた。廃線された線区は基本的に盲腸線・バイパス線であったといえる。
(以下の叙述は一貫した基準になっていないことを宥恕頂きたい)
例えば北海道であれば廃止,転換線区中両端が国鉄線と接続していたのは羽幌線・天北線・深名線・名寄本線・湧網線・標津線・池北線・胆振線あたりである。
その他興浜北線・南線・渚滑線・相生線・白糠線・士幌線・広尾線・富内線・幌内線・万字線・松前線岩内線・瀬棚線・歌志内線・美幸線などは盲腸線である。

本州以南でも同様だろう。廃止、転換された線区はその大多数が盲腸線であった。もちろんその先の未完成により利用者が少ないことという考えもあっただろう。それは例えば久慈・宮古・盛線が三陸鉄道南北リアス線として、丸森線が阿武隈急行線として開業するなどして決着を見ているところもある。あるいは北海道の各線がそうだったように志半ばにして廃止というのも多い。
既に完成している線区の廃止、転換となると例えば漆生線・田川線・糸田線・伊田線・勝田線などむしろ少数だろう。

しかし現在利用者が少ないとして挙げられているのは幹線(地方交通線との対比概念としてではないので注意)である。要はメインルートであり、人体で言えばいわば骨格である。(中間的的類型にあったのが三江線だったのだろう。つまり両端はJRに接続しているが路線網としてもはや機能していない路線と位置づけられる)例えば宗谷本線は行き止まりではあるがここでいう幹線(網)に該当する。

順を追って考えると①鉄道網として枝葉末節にあたる盲腸線を廃止する→②路線網として機能していない線区を廃止する→そして③路線網を縮小するという順序できているといっていいだろう。

ではそう考えた上で廃止しやすい線区はどこだろうか。特に経営戦略として慎重になることを要しないと言わざるを得ない線区はつまり盲腸線であり、その先を結ぶバス等がない区間であろう。さらに新車の導入や、設備強化をしている線区については除外されるが、これらの設備投資があくまで合理化のための場合は話が変わる(例:ワンマン化のための新車導入など)。
JR北海道の場合、確かに留萌本線はこの意味での盲腸線に当たる。根室本線の滝川ー富良野ー新得に関しては路線網として機能していない、つまりバイパスであった石勝線にその使命を譲ったと言えるだろう。
JR東日本は具体的な廃止議論が出ていないが、大船渡線・気仙沼線はBRTを除けば盲腸線である。それだけで強引な議論を進めることはあるまいが、BRTに統一して整備したいのはやまやまだろう。
吾妻線・左沢線・久留里線・津軽線・弥彦線・男鹿線・烏山線などは典型的な盲腸線である。特に久留里線の久留里~上総亀山間の営業係数は2019年度で15,546円と”天文学的”である。
JR東海は収支を出していないが、やはり名松線が一番経営状況の芳しくない路線だろうといえる。美濃赤坂支線に関しては西濃鉄道の貨物線があるため、話は単純でない。
JR西日本に関しては中国山地を縫う線区がネックである。因美線:東津山~智頭に関してはその典型で、智頭急行にその使命を譲ったと言わざるを得ない。美祢線にかんしては貨物輸送で幹線運賃が適用されてきた経緯を持つがやはり苦しい。芸備線に関してはバイパス機能がなければ、あるいは広島都市圏の隆盛がなければあっさり廃止されていただろうといえる。
JR四国はほとんどの区間で積極策を打っているために課題が見えづらい。予土線が最も営業係数が悪い。次いで牟岐線の阿南以南だが、こちらはバスとの共存を図っている。
JR九州は日田彦山線でBRT転換が決定している。観光需要喚起だけである程度使命を持たせていた線区であっても厳しいものが見えてくる。

では線区の廃止の要因は輸送密度や営業係数係数だけなのか。次回はこれらを検証していく。

【編集後記】
試験勉強に飽きて書いてしまった。あと、廃止された線名が予測変換であまり出てこないのが本当に悲しい。

【参考:普段なら前に持ってくるものだったがあまりにも量が多い】
JR北海道
平成30年(2018年)度線区別の収支とご利用状況について(令和元年9月4日)
2019年度線区別の収支とご利用状況について(2020年6月8日)
2020年度線区別の収支とご利用状況について(2021年6月4日)
2021年度第1四半期線区別の収支とご利用状況について(2021年9月8日)
2021年度第2四半期線区別の収支とご利用状況について(4月から9月までの実績)(2021年12月8日)
2021年度第3四半期線区別の収支とご利用状況について(4月から12月までの実績)(2022年3月9日)
JR東日本
ご利用の少ない線区の経営情報を開示します(2022年7月28日)
JR西日本
ローカル線に関する課題認識と情報開示について(2022年4月11日)
JR四国
線区別収支と営業係数の公表について(2022年5月17日)
JR九州
交通・営業データ(JR九州)