キハ120系運用線区の趨勢を考えてみる

2024年4月26日JR各社/三セク国鉄

JR西日本ローカル線の代名詞キハ120系。軽快気動車のキャッチフレーズのとおりこじんまりとした車両でともすればレールバスに近しい。
しかしこの車両もまもなく車齢30年。内装などの更新工事が始まっていることから、その寿命の長くないことは想像に難くない。
ある意味キハ120系だからもっているという線区も少なくない。となれば車両を新しくしなければならないころまでに「地域交通体系の見直し(₌廃線の隠語)」も十分あり得る話である。つまり車両の更新費用も沿線自治体に要求する例がありうるということだ。実際山陰本線快速キハ126系、姫新線兵庫県区間キハ127系ではそのような援助が行われている。(なおこの時は高速化とセットでかつ後者は増発実験も込みであった)
他方で実は結構本数が多い路線を受け持っている側面もある。そうした線区であれば(20m級の)新車気動車を導入する可能性が捨てきれないことになる。
では実際にキハ120系が運転されている線区の輸送密度と運転本数の概略を見ていこう。
輸送密度のデータはJR西日本HPより2019年度のもの。本数概略はJTB時刻表より。両数に関してはソースが見つからなかったためやむなくWikipediaとした。


参考とあるのはキハ120がメインで使われていない区間。また該当線区に一致する輸送密度のデータがなかった区間。(完全に一致しないもののほぼ該当する区間については備考参照)〇印は当該区間の普通快速列車をキハ120のみで運用している区間。運転本数の数え方はアバウトなところがあるかもしれないがご容赦願いたい。
両数について※1全体で16両、※2全体で10両、※3全体で7両。

路線名 区間 輸送密度 両数 本数概要 備考
参考 津山線 津山 岡山 3,588 ※1 キハ120の運用は少ない
参考 伯備線 伯耆大山 新見 3,537 ※1 キハ120の運用は少ない
高山本線 富山 猪谷 2,288 12両 9~22往復 特急4往復あり
山陰本線 出雲市 益田 1,177 14両 15往復程度 特急多し
関西本線 加茂 亀山 1,090 14両 19~23往復
姫新線 津山 中国勝山 820 ※1 12往復
美祢線 厚狭 長門市 478 ※3 10往復
姫新線 上月 津山 413 ※1 9~11往復 運用は佐用から
越美北線 福井 九頭竜湖 399 5両 4.5~9往復
参考 山陰線 長門市 仙崎 351 ※3 6往復 小串~長門市~仙崎のデータ
姫新線 中国勝山 新見 306 ※1 8往復
山陰本線 益田 長門市 271 ※3 7~8往復
芸備線 備後落合 三次 215 ※2 5~7往復
木次線 宍道 備後落合 190 5両 3~10.5往復 運用は宍道松江間含む
因美線 智頭 津山 179 ※1 8~10往復
福塩線 府中 塩町 162 ※2 6往復
大糸線 糸魚川 南小谷 102 3両 7~9往復
芸備線 備中神代 東城 81 ※1 6往復 運用は新見から
芸備線 東城 備後落合 11 ※1 3往復

この中で20m旧車両の新造がありうるのは、津山線はキハ40ともどもで、また伯備線は運用の都合で入っているからともかくとして、まず高山本線、山陰本線(出雲市-益田:キハ40ともどもだろう)、関西本線だろう。
高山本線に関しては列車増発実証実験によって回復した輸送密度がまた下り傾向になっている。ただ富山県が鉄道に対しての本気度が高いことは確かであるしその辺りが作用すれば十分あり得る話だろう。
関西本線に関してはICOCAリーダーを車載したことが若干気になるがそれでもキハ120系単行では輸送密度が高く2両使っている例があるためあえて20m車両を導入して”効率化”を図る可能性も否定できない。(20m車を入れて運用両数を減らすことができると判断した場合)
姫新線津山中国勝山間は確かに輸送密度が高いがただ朝ラッシュにキハ40系を用いることがあるので津山線のそれを借りている現状をキハ40から車両が変わっても維持すれば済むだろう。

他方芸備線以下の7線区は厳しい現実を突きつけられそうだ。木次線は全線での輸送密度のため宍道方ではより高いし、備後落合方3往復の区間はより低いだろう。中国山地を縫うこれら路線(大糸線が混じっているがについては実際輸送改善に関する協議が始まっていることと察することができる。この7線区合計で現在25両程度。果たしてJR西日本(か20年後これら路線を請け負っている会社)がレールバス新車を造るか否かはまた考え物だろう(ここでキハ40系をまだ使うというのは上で言った通り、キハ120系の低コスト性を無視していると言える)。