キハ120系運用線区の趨勢を考えてみる
JR西日本ローカル線の代名詞キハ120系。軽快気動車のキャッチフレーズのとおりこじんまりとした車両でともすればレールバスに近しい。
しかしこの車両もまもなく車齢30年。内装などの更新工事が始まっていることから、その寿命の長くないことは想像に難くない。
ある意味キハ120系だからもっているという線区も少なくない。となれば車両を新しくしなければならないころまでに「地域交通体系の見直し(₌廃線の隠語)」も十分あり得る話である。つまり車両の更新費用も沿線自治体に要求する例がありうるということだ。実際山陰本線快速キハ126系、姫新線兵庫県区間キハ127系ではそのような援助が行われている。(なおこの時は高速化とセットでかつ後者は増発実験も込みであった)
他方で実は結構本数が多い路線を受け持っている側面もある。そうした線区であれば(20m級の)新車気動車を導入する可能性が捨てきれないことになる。
では実際にキハ120系が運転されている線区の輸送密度と運転本数の概略を見ていこう。
輸送密度のデータはJR西日本HPより2019年度のもの。本数概略はJTB時刻表より。両数に関してはソースが見つからなかったためやむなくWikipediaとした。
参考とあるのはキハ120がメインで使われていない区間。また該当線区に一致する輸送密度のデータがなかった区間。(完全に一致しないもののほぼ該当する区間については備考参照)〇印は当該区間の普通快速列車をキハ120のみで運用している区間。運転本数の数え方はアバウトなところがあるかもしれないがご容赦願いたい。
両数について※1全体で16両、※2全体で10両、※3全体で7両。
路線名 | 区間 | 輸送密度 | 両数 | 本数概要 | 備考 | ||
参考 | 津山線 | 津山 | 岡山 | 3,588 | ※1 | 略 | キハ120の運用は少ない |
参考 | 伯備線 | 伯耆大山 | 新見 | 3,537 | ※1 | 略 | キハ120の運用は少ない |
〇 | 高山本線 | 富山 | 猪谷 | 2,288 | 12両 | 9~22往復 | 特急4往復あり |
山陰本線 | 出雲市 | 益田 | 1,177 | 14両 | 15往復程度 | 特急多し | |
〇 | 関西本線 | 加茂 | 亀山 | 1,090 | 14両 | 19~23往復 | |
姫新線 | 津山 | 中国勝山 | 820 | ※1 | 12往復 | ||
〇 | 美祢線 | 厚狭 | 長門市 | 478 | ※3 | 10往復 | |
〇 | 姫新線 | 上月 | 津山 | 413 | ※1 | 9~11往復 | 運用は佐用から |
〇 | 越美北線 | 福井 | 九頭竜湖 | 399 | 5両 | 4.5~9往復 | |
参考 | 山陰線 | 長門市 | 仙崎 | 351 | ※3 | 6往復 | 小串~長門市~仙崎のデータ |
〇 | 姫新線 | 中国勝山 | 新見 | 306 | ※1 | 8往復 | |
山陰本線 | 益田 | 長門市 | 271 | ※3 | 7~8往復 | ||
〇 | 芸備線 | 備後落合 | 三次 | 215 | ※2 | 5~7往復 | |
〇 | 木次線 | 宍道 | 備後落合 | 190 | 5両 | 3~10.5往復 | 運用は宍道松江間含む |
〇 | 因美線 | 智頭 | 津山 | 179 | ※1 | 8~10往復 | |
〇 | 福塩線 | 府中 | 塩町 | 162 | ※2 | 6往復 | |
〇 | 大糸線 | 糸魚川 | 南小谷 | 102 | 3両 | 7~9往復 | |
〇 | 芸備線 | 備中神代 | 東城 | 81 | ※1 | 6往復 | 運用は新見から |
〇 | 芸備線 | 東城 | 備後落合 | 11 | ※1 | 3往復 |
この中で20m旧車両の新造がありうるのは、津山線はキハ40ともどもで、また伯備線は運用の都合で入っているからともかくとして、まず高山本線、山陰本線(出雲市-益田:キハ40ともどもだろう)、関西本線だろう。
高山本線に関しては列車増発実証実験によって回復した輸送密度がまた下り傾向になっている。ただ富山県が鉄道に対しての本気度が高いことは確かであるしその辺りが作用すれば十分あり得る話だろう。
関西本線に関してはICOCAリーダーを車載したことが若干気になるがそれでもキハ120系単行では輸送密度が高く2両使っている例があるためあえて20m車両を導入して”効率化”を図る可能性も否定できない。(20m車を入れて運用両数を減らすことができると判断した場合)
姫新線津山中国勝山間は確かに輸送密度が高いがただ朝ラッシュにキハ40系を用いることがあるので津山線のそれを借りている現状をキハ40から車両が変わっても維持すれば済むだろう。
他方芸備線以下の7線区は厳しい現実を突きつけられそうだ。木次線は全線での輸送密度のため宍道方ではより高いし、備後落合方3往復の区間はより低いだろう。中国山地を縫うこれら路線(大糸線が混じっているがについては実際輸送改善に関する協議が始まっていることと察することができる。この7線区合計で現在25両程度。果たしてJR西日本(か20年後これら路線を請け負っている会社)がレールバス新車を造るか否かはまた考え物だろう(ここでキハ40系をまだ使うというのは上で言った通り、キハ120系の低コスト性を無視していると言える)。
ディスカッション
コメント一覧
>>3
確かに高山線は特急ひだ号のこともありますからJR東海が運行する蓋然性は高いだろうと思います。
ただ氷見城端線のLRT化が計画として進むのか、また大糸線を引き受ける事業者がそもそも想定できるのかは見通しがかなり不透明だと思います
関西本線も旧来急行かすがが通っていたことを思えば期待したくなりますが、おそらくJR東海からすれば奈良まで乗り入れさせてくれないとそもそも話にならないのではないでしょうか。そうすれば奈良ー亀山ー紀勢参宮方面というルートの活用しがいもまだ出てくると思います。
他のサイトでもたまに見かけますが、東海に隣接してる高山線と関西線を、運行・乗務員・車両を東海に委託させるという動きは無くはないのかなと思われます。
それは東海のキハ25・75の後継車が出る頃がいいタイミングかもしれません。
高山線の場合は城端線系統のLRT化と大糸線のえちトキ線への運行委託が進めば、金沢支社のキハ拠点+乗務員のDC行路そのものを無くせますし、
関西線も紀勢線系統との共通化と亀山鉄道部乗務員を東海の亀山運輸区に統合して人員確保出来ますね。
>>1
実際JR東、九、北の各社では電気式気動車で一気にキハ40系を置き換えるというのがここ最近のトレンドなのでその辺りを考えたときにDEC700の量産車ができたとして、キハ40系統をまず置き換えたとしてその次に古い気動車になるキハ120系をどうするのか?という話になるだろうな、と思ったんです。
わざわざDEC700のミニ版を作るのかどうか?寧ろそれを(例えば関西線に)そのまま投入して16車2両運用を20m車1両に減じるのか?という問題になるのかなと思いました(そうなると芸備線ほか諸線区がどうなるのか?というのは置き去りですが)
関西線の非電化区間に関して確かに輸送密度が両端の区間に比べて低く明治時代関西鉄道以来の経緯から高コストな路線になってるのは否めません。例えば長大ホームの短縮などを行ったり、上下分離を行う可能性も捨ててはいけないでしょう。ただ三江線が廃止された中国山地各線(芸備,木次線)のように「明日は我が身」感は低いでしょう…
仰っている「20m車両を導入して”効率化”を図る可能性」
→ 確か、山口県内の路線にて近々始まる、新型気動車「DEC700系」の試験が良好で、(新製)費用対効果が見込めるようならば、ありうる話かもしれません…
が、関西線(亀山~加茂)に関しては、沿線の過疎化が進んでいたり、伊賀を発着する名古屋方面・京阪方面への高速バスも定着しないような状況下で、最近は、災害が頻発し復旧に費やす費用がかかりすぎる故、路線そのものの廃止議論がくすぶり続けていますので、先行きは厳しいかと…