「加算運賃」いつなくなるの? 2023年再計算ver
「加算運賃は、主として新規路線の開業等に伴い発生する多額の資本費コストを回収するために、加算区間において基本運賃に加算して設定されるものである。」というのが国交省の定義だそうで、加算運賃はその資本費コスト回収率が100%になるまで続けられる(途中で経営判断で減額廃止は当然可能)。
今回も予想する。前回の予想はこちら 「加算運賃」いつなくなるの? 2022年再計算ver
前回まで、回収率の増減ベースで計算していたが、よく考えれば額面ベースで計算しないと色々不合理が生じそうであるので、以下の通りの計算とする。
1.加算運賃は「A:新線の設備投資額」と「B:毎年かかる使用料・支払利子」を「C:加算運賃収入」と「D:基本運賃収入からの回収額」でまかないきるまで設定できる
2.毎年かかるのはB、毎年の収入はC+Dであるから、B<C+Dであるときに限り「回収のめどあり」とする(コロナの影響があるのでひとまず令和4年度の額のみで判断する)。
3.回収にかかる年数は「令和4年時点での(A+B)-(C+D)の累計額」を「令和4年の(C+D)-Bの額」で除した数値(小数点以下切り上げ)である。
4.令和4年のコスト・回収額がB>C+Dの場合は(ひとまず)「回収のめどなし」と考える。
それで計算した結果がこうである。残高と回収は令和4年時点で回収すべき残高と令和4年で回収された額(単位は百万円)である。
社名 | 線名 | 残高 | 回収 | 年数 |
京急 | 空港 | 14823 | 750 | 20 |
京成 | 本線 | 10368 | 161 | 65 |
阪神 | なんば | 13075 | 189 | 70 |
名鉄 | 豊田 | 29733 | 306 | 98 |
JR四 | 本四備讃 | 21725 | 205 | 106 |
近鉄 | 鳥羽 | 6161 | 57 | 109 |
京阪 | 鴨東 | 44816 | 366 | 123 |
近鉄 | けいは① | 140921 | 1064 | 133 |
JR九 | 宮崎空港 | 1528 | 7 | 219 |
泉北 | 泉北 | 21241 | 67 | 318 |
相鉄 | いずみ野 | 104627 | 295 | 355 |
東急 | 新横浜 | 18477 | 36 | 514 |
名鉄 | 知多新 | 16323 | 13 | 1256 |
京成 | 東成田 | 67869 | 30 | 2263 |
JR北 | 千歳 | 3297 | -46 | なし |
JR西 | 関西空港 | 141790 | -1337 | なし |
近鉄 | けいは② | 73433 | -1537 | なし |
京阪 | 中之島 | 18543 | -1150 | なし |
相鉄 | 新横浜 | 17719 | -1359 | なし |
南海 | 空港 | 81810 | -257 | なし |
名鉄 | 空港 | 40508 | -886 | なし |
名鉄 | 羽島 | 5611 | -13 | なし |
おおよそ今までの計算とそこまで乖離しない結果とはなったが、少し辛めの評価となったと言えよう。また、上記計算上の「D」に当たる部分は、鉄道事業が赤字であると0となるため、各社にとって不利な計算になっていることは否めない。空港連絡鉄道にかんしては、回収額の差が2018年比で数倍になっていることがあり、例えば京成本線の2018年の回収額は7.69億円であり、これに基づけば回収まで残り14年である。そのため、上記の数値は「2022年のペースで行けばこうなる」というだけであり、これよりはマシになる線区が一定数あることは理解してほしい(また今後運賃改定を控えている線区も多い)。
なお、近鉄けいはんな線(生駒~登美ヶ丘)や、中之島線のように上下分離式で経営している場合、施設使用料がどうしても高くなり、回収に時間がかかったりしているといえる。他方、自社で開業している線区(京急空港線など)はやや有利であるといえよう。
令和4年の計算だと回収額が負の値を取っている路線でも、回収可能性がある線区については触れておきたい。
JR北海道千歳線:施設使用料2.21億円程度で一定に対し、平成30年の加算運賃収入が14.93億円。令和元年10月に加算運賃が140円から20円に引き下げになっているわけで、加算運賃収入が施設使用料に近くなるはずである(現在の回収率は90%、おそらくこのままで推移しそうである)。
南海空港線:2018年度、2019年度の施設使用料合計額は46.02億円、収入は56.01億円である。このペースで回収される(年5億円ずつ回収)とすれば、164年で回収できるといえる。
なお、東急新横浜線はあくまで開業当初であるため、そもそもデータが参考にならないこと、相鉄新横浜線は西谷~羽沢横浜国大までは2019年開業、羽沢横浜国大~新横浜は2023年3月開業であり、そのデータが混ぜられていることに注意が必要である。
加算運賃の回収率データは国交省HPに示されているひな形で統一されているためかなり調べやすい。興味がある方はぜひ。
ディスカッション
コメント一覧
相鉄と東急の新横浜線に関しては開業日が2023.3.18であるために2022年度の計算(2022.4.1~2022.3.31)においては営業日はたった14日でしかなく計算は不適切にならざるを得ず注釈を入れるべきなのでは?
さらに相鉄新横浜線は一つにまとまっておりますが西谷~羽沢横浜国大が365日、羽沢横浜国大~新横浜が14日であり、
それも注釈に入れるべきなのでは?
コメントありがとうございます
ご指摘の通りかと思います。その旨注記いたします(また、2024年版を11月中に投稿予定です)