近鉄,24年ぶりの新車導入 老朽車淘汰には程遠く

2024年4月26日近鉄

近畿日本鉄道は17日、新車の導入計画を発表した。
2024年秋 新型一般車両を導入します(近畿日本鉄道HP)

特急電車を除く新車導入は「シリーズ21」以来実に24年ぶり。昭和40年台(車齢50年以上)の車両が450両あるがこれを「お客さまのご利用状況を見極め」ながら置き換えていく。
車両は4両編成が10本、計40両。総投資額は84億円。
車両連結部には転落防止幌を設置し、車内は大型LEDディスプレイを設置する。また防犯カメラの設置やバリアフリースペースの追加も現代の車両らしく実装される。
シート形態はL/Cカー。ドア間6人掛けであることを見るにやはり4ドアでの制作となるようだ。
シートの形状として参考になるページを上げておく。1人当たりの占有幅がひじ掛けによってロングシート時に通常のそれより広くなるというわけである。

また、ドア間にはベビーカーや、大型荷物に対応した座席スペースを2か所設ける。この部分は前向きにも横向きにも座れることになる。

更に特筆すべきなのは、ドア開閉ボタンが追加されることである。特急、急行の通過待ちが多い線区が多いのにドア開閉ボタンがなく、長時間停車するときは一部のドアのみ手でこじ開ける方法がとられていた。
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↑名古屋線での例。車両は5200系。
このような手法を採らずとも済むことになるのは大きなメリットである

そして導入線区は(この40両に関しては)奈良線、京都線、橿原線、天理線である。古い車両が比較的多い大阪線、名古屋線関係線区には直接導入しない。恐らく廃車、転出による押しだしでの更新が図られることになろう。

さて、上で「お客さまのご利用状況を見極め」ながら置き換えていくとあった。40両に対して設備投資費は84億円、1両辺り1.85億円である。
ここで近鉄が2023年度から運賃値上げをする際に設備投資の計画を示している。これを引用すると

①一般車両の更新、車内防犯対策
(2023年度~2025年度の投資額計:約180億円)

ア.老朽化した一般車両の更新

新造から55年を超えた高経年の車両から更新を進めます。昭和40年代
に製造した車両の約450両について、2024年度以降、お客様のご利用
状況を見極めたうえで、必要分を順次新型車両に置き換える計画です。

イ.車内の防犯対策

車内の防犯対策を強化するため、全車両への車内防犯カメラの整備を進
めるほか、通話機能を備えた車内通報装置の設置を拡大します。 

引用元:鉄軌道旅客運賃の改定を申請しました(近畿日本鉄道HP)

投資額を全て使っても大体100両弱しか置き換えれないことになる。防犯対策の強化を図ることを鑑みれば今回の40両を除いて2025年度までに更に40両程度、計80両程度しか置き換え、新造されないのだろうと推測できる。

近鉄のベテラン車両はまだまだ安泰とも言えそうだ。

ちなみに、近鉄HDは2021年に、2024年度までの中期経営計画(見直し)を発表している。それによれば、2024年度には650億円の営業利益を得れるようにするなどの目標を掲げている。そこでは鉄道に関しては新規の観光特急(おそらくあをによしを指すものと言える)などの記載はあるが、通勤電車の言及はなかった。
「近鉄グループ中期経営計画2024」の策定について