阪急電鉄、有料特急導入検討 いつごろ?他社と比較してみる
ついに阪急電車が有料特急の導入を検討する。
阪急電鉄が、通勤時間帯に有料で座れる特急車両の導入を検討していることが16日、わかった。通勤中に仕事ができるよう、コンセントや通信環境も整備する見通し。現行の特急は運賃だけで乗れるため、「有料化は同社では初めて」(広報)という。
阪急阪神ホールディングスの角和夫会長が朝日新聞のインタビューで明らかにした。有料特急の走行区間は大阪梅田―京都河原町(営業距離47・7キロ、所要時間約42分)を想定。専用の電車を設けるか、一部の車両を有料の指定席にすることを検討している。角会長は「通勤時間帯にゆったりと仕事をしながら移動してもらうというのは、今の時代に悪くない」と語った。(上記記事引用)
導入がされている路線は京都本線。快速特急京とれいん号が運転している(土休日のみ)路線で、京とれいんはその豪華な車内でありながら通常の乗車料金のみで乗車できる。
関西圏の鉄道では近鉄、南海のみが有料特急を運転していたが、2015年12月に泉北高速(と南海電車)が泉北ライナーを、2017年8月に京阪電車が特急列車に有料指定席プレミアムカーを導入すると、2019年3月のダイヤ改正でJR西日本の琵琶湖線、JR京都線、JR神戸線、山陽本線でも新快速の2往復に多分に試験的にではあるが有料座席(定員制)Aシートを導入し、2020年12月からその一部を指定席としている。
阪急が有料特急(or指定席)を検討することには十分な理由がそろっている。京都線特急の42分は確かに有料特急の乗車時間としては短い部類に入るであろう。しかし、近鉄の阪奈特急は約36分、泉北ライナーは難波ー和泉中央間で最速29分であるので短時間でも需要は充分見込まれる。(京阪特急の出町柳-淀屋橋間は約1時間、南海高野線のこうや号:難波ー橋本間は約48分である)
あとは導入時期の問題である。検討に入るという報道から、正式表明、そして実際の導入までどれくらいの時間がかかったかを以下参考として列挙する。
なお以下の下線部はニュースリリース、報道記事にリンクしている。
<泉北ライナー>
導入発表:2015年10月8日ニュースリリース
↓約2か月
導入:2015年12月5日ダイヤ改正より
<京阪特急のプレミアムカー>
導入の正式表明:2015年9月30日ニュースリリース
↓約2年
サービス開始日:2017年8月20日 (同年3月30日ニュースリリース)
<JR西日本のAシート>
導入の報道:2018年6月5日日刊工業新聞電子版 (リンク先は6日付産経新聞電子版)
↓約半年
正式発表:2018年12月14日ニュースリリース
↓約3か月
実際の導入:2019年3月16日
指定席の導入: 発表2020年10月28日 開始同年12月1日から
恐らく一番規模、方式が近づくだろう京阪電車で2年かかっている。となれば検討開始の報道である阪急の有料特急は3年くらいかかるかもしれないと考えるのが妥当であろう。(ちなみに西日本鉄道の夜間帯の有料特急導入は2020年3月に21年春に導入と報じられたものの立ち消えとなっている)
そして関西圏の大手私鉄の残り、阪神電車は無料特急のみを運転している。有料特急を伝統的に運転している近鉄電車と大阪難波で直通しているが指定席システムの導入コストも相まってか近鉄特急の直通運転も実施されていない。阪急線の有料特急/有料指定席の導入は料金収受システムの構築も必要になる。
今後阪急電車、そして関西圏での快適な移動がさらに発展することを望みたい。
【付記 21年2月17日】阪急電車は「お客様に優劣をつけない」というポリシーがあるとよく語られる。京とれいん号の導入の際も、『京阪プレミアムカーほどの指定席システム開発費用が回収できるほどの多くの本数でもなく、南海の観光列車「天空」のように電話予約によるマンパワーで対応できるほどの本数でもなく、阪急に座席指定券を発行する仕組みがないことが直接的な原因ではあるが、宝塚線での庄内事件をきっかけに確固たるものになった「お客様に優劣をつけない」というポリシーが背景にある』とあり、『そのポリシーが今も生きている』とされている。そのポリシーとの整合性がこの検討に影響を及ぼすことは間違いないので付記しておきます。
(付記部分の参考文献:交通新聞社『関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか』伊原薫著p120-123)
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