Osaka Metroと市バスの営業係数が知りたい!(前編)

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かつて大阪市交通局は、平成19年度以降線区別営業係数を公表していた。そして2018年度以降は都市交通局のHPで公開されていた(なぜか消されているので国会図書館のアーカイブを添付しておく)。

自動車運送事業会計・高速鉄道事業会計の決算概要について

しかし、大阪市交通局が分割民営化(大阪市高速電気軌道と大阪シティバス)されてから同種のデータは公表されていなかった。そこでそれを求めるために結構苦労したというのが今回のお話。

前編として、行政処分周りの話を全部済まして、後編として実際に得たデータをここに公開するという形である。後編はこちらから。

経緯

任意の情報提供を求める

まずは、大阪市に情報公開条例を使わない任意の情報提供を求めた。

6月21日:大阪市にメール
6月24日:総務局から両社へは個別に問い合わせること、大阪市内で捜索してもらう旨連絡あり。
7月2日:都市交通局から「大阪市に保有していない」旨連絡
7月17日:Osaka Metroから「営業上の秘密情報にあたることから非開示」の旨連絡

情報公開請求

大阪市に対しては条例に基づく情報公開請求、Osaka Metro・シティバスへは、条例の趣旨を受けた要綱に基づき情報公開申出制度があるので、それに基づく申出を実施。これは、大阪市が出資している会社も大阪市政の一翼を担っているけれど一応は別法人だからそのことを踏まえた措置とのこと。

8月21日:大阪市長に情報公開請求。大阪市総務局から経緯の確認を含め電話があったため、審査請求を行えるように非開示(不存在)決定を出すよう要請。
8月21日:大阪シティバス、Osaka Metroへ公開申出書を送るよう問い合わせ
8月29日:大阪シティバスとOsaka Metroからそれぞれメールあり
9月4日:大阪市長から「不存在(取得せず)」との非公開決定
9月13日:大阪シティバスから「非開示(正当な利益を害する)」との決定
9月19日:Osaka Metroから「非開示(業務に支障をきたすため)」との決定
 9月20日頃に両社からの文書を受け取りました

審査請求・異議申出

不利益処分があったらそれに対しては異議申出、すなわち審査請求ができる。これとパラレルな制度として両社には「異議申出」があった。情報公開請求制度は「原則開示」なので、こちらから情報公開できることの理由などを示す必要も余地もない。一方で、ひとたび不利益処分が出た際にはそれが不当・違法であることを示す場面が出てくるというわけである。

11月5日:大阪市長、Osaka Metro、シティバスに審査請求、異議申出実施
2025年3月4日:大阪市長の弁明書を受領
3月中:Osaka Metro内部で異議申出にかかる情報審査会議実施(リンク
3月28日:弁明書に対して反論
3月31日:Osaka Metroから部分開示決定

以下、対大阪市、Osaka Metro、シティバスとの攻防を明らかにしておこうと思う

対大阪市

請求した文書

大阪市高速電気軌道株式会社又は大阪市都市交通局等が保有していると見込まれる、平成30年度以降令和5年度までの大阪市高速電気軌道株式会社の線区別営業係数、及び大阪シティバス株式会社運営路線の路線別営業係数(平成29年度まで大阪市交通局が公開していたと同様のもの)が記載されている文書

大阪市の不存在決定理由

同文書は、大阪市高速電気軌道株式会社又は大阪シティバスが作成するものであることから、当該文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。

私の反論

①総務局から電話があった際に都市交通局以外はないはずという前提で調べると言っていた(つまり他部局で持っている可能性はあるはずなのに探そうとすらしていないのは不当)
②理由の不足(※理由不足は行政処分そのものを一発で違法にするので一応指摘した)
③大阪市は両社の100%株主なのだから、両社の監理にあたり文書を保有している蓋然性がある

弁明書

①所掌規定上都市交通局以外で探さないことに不合理な点はない
②理由は充分
③監理に必要な文書しか取得していない

意見書

①保管年限の差で他の部署で持っている可能性だってあるでしょ
②理由はやっぱり不足している(くどく言っている)
③監理に必要な文書であることは、旧大阪市交通局が作成していたことから明らか

対Osaka Metro・シティバス

請求した文書

【Osaka Metro宛】 シティバスは2に絞って申出

以下に関する系統別経営・収支状況(すなわち、1日辺りの乗車人員、キロ当たり乗車人員、年間当たり営業収益・費用・損益、営業係数)が記載された文書(平成30年度から
最新年度までの各年度それぞれのもの)
1.貴社が営業する地下鉄・ニュートラム各路線に関するもの
2.大阪シティバス株式会社が営業するバス路線に関するもの
(なお、過去に大阪市交通局が公開していたものと同旨のものです。参考として、平成29年度のもののリンクを記載します)
https://www.city.osaka.lg.jp/toshikotsu/cmsfiles/contents/0000463/463155/h29_2kessangaiyou.pdf

非開示決定理由

【Osaka Metro】
申出のありました会社文書は、当社の経営計画や投資判断に影響する重要な情報であり、その会社文書を開示することで、当社の業務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため
【シティバス】
申出がありました弊社が営業するバス路線に関する系統別経営・収支状況につきましては、公開することにより弊社の競争上の地位その他の正当な利益を害する恐れが害するおそれがあると考えられるため、非開示としております。

私の反論

①そもそも、条例とその解釈指針を参照すると両社を純然たる私人として理解して開示決定の是非を考えること自体がおかしい。解釈指針にあるように両社は大阪市「の事務事業の一部を補完又は分担し、市政の重要な一翼を担うとともに、本市から財政的支援や人的支援を受けている」わけである。

大阪市条例7条2号「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。」とパラレルな要綱を適用して非開示にしているようだが、大阪市にとってこの条項を適用するときは大阪市にとって他者(他社)の情報を開示することについて判断しているはずである。となれば、両社の要綱を解釈するときも、同社にとって他社の情報であるか、同社の情報であって、大阪市政とまったく無関係な事業内容についてのみ適用されるべき。

にもかかわらず、自らの競争上の地位を保護するために非公開にしているのは要綱の趣旨からして不当。

②本件文書は大阪市交通局が決算概要として公開してきたものと同様のものである。交通局は積極的に情報を開示し、市民及び利用者に対し説明責任を果たしてきたはずである。そして両社はそれぞれ大阪市が直接・間接に100%株式を保有している。そしてあくまで大阪市の事業を承継しているのだから、単に営業上の指数であることの一事をもって「競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」とするのは不当であると言わざるを得ない。

(Osaka Metroに対してだけ)地下鉄の営業係数は一般社団法人日本地下鉄協会の公表する「地下鉄事業の現況」や国土交通省の公表する「鉄道統計年報」にかなり仔細な情報が公開されている。それでも事業遂行に影響があるとでも申すのか。

公表されている内容

「地下鉄事業の現況」:路線別の路線別輸送人キロ、平均輸送人員

「鉄道統計年報」:
路線別の
・輸送人員(通勤・通学・定期外ごと、及びその比率)
・旅客運輸収入(通勤・通学・定期外ごと、及びその比率)、運輸収入
・旅客人キロ(通勤・通学・定期外ごと)
・旅客平均通過数量、平均輸送キロ
さらに
・鉄軌道業の営業収益、営業費、営業外収益、営業外費用、経常損益、特別利益、特別損失、法人税等、当初損益
・新交通または地下鉄の種別単位での旅客収入額、運輸雑種額
・新交通または地下鉄の種別単位での営業費(人件費、経費)、電路保存費、車両保存費、運転費、運輸費、保守管理費、輸送管理費、案内宣伝費、校正福利施設費、一般管理費、諸税、減価償却費

部分開示決定(Osaka Metro)

【開示】
①当社の営業する地下鉄の各路線における路線別経営・収支状況のうち、1 日当たりの乗車人員、キロ当たり乗車人員、年間当たり営業収入が記載された文書
②当社の営業するニュートラムにおける経営・収支状況が記載された文書
【非開示】
①当社の営業する地下鉄の各路線における路線別経営・収支状況のうち、年間当たりの営業利益・費用・損益及び営業係数に関する情報が記載された文書
②大阪シティバス株式会社の営業する路線バスにおける系統別経営・収支状況が記載された文書

理由書は以下に張り付けていますがある程度要約しておけば
【開示理由】秘匿性が高くない
【非開示①理由】
他の交通事業者にとっても役に立つ文書であるだけでなく、Osaka Metroが地下鉄・バス以外に不動産やマーケティングを実施していることから、これを公開することでOsaka Metroの事業計画が妨害される
【非開示②理由】
ほぼ同様だが、資本関係があるとはいえOsaka Metroにとって大阪シティバスは他社である(ゆえに理由の示し方は簡潔)

参考

Osaka Metroの情報開示規則
https://manager-travels.com/wp-dl/wp-content/uploads/【参考】情報開示規則.pdf

規則7条2号
法人その他の団体(…)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。ただし、人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。

規則7条4号
営業上若しくは技術上その他の会社の業務に関する情報又は大阪市等が行う事務若しくは事業に関する情報であって、公にすることにより、会社の株主及び債権者の利益を害するおそれ又は次に掲げるおそれその他当該業務、事務若しくは事業(以下「業務等」という。)の性質上、当該業務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
ア~エ 略
オ 会社に係る業務等に関し、会社の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ

出資等法人の情報公開に関するモデル要綱(株式会社版)
https://www.city.osaka.lg.jp/somu/page/0000199567.html

出資等法人の情報公開に関するモデル要綱施行要領
https://www.city.osaka.lg.jp/somu/page/0000199577.html