Aシート更に増発 今後どこまで増える?【23年春改正】

2024年7月11日未分類

はじめに

長らく関西では有料着席サービスなど根付かないと言われてきた。しかし京阪プレミアムカーを皮切りに泉北ライナーなど着々と勢力を増している。そんな中JR西日本のフラッグシップ「新快速」に導入されたA-seat。2023年春ダイヤ改正で増発が図られることとなり、今後もますます勢いが増す….

と言い切っていいのかを今回は考えたい。2019年春ダイヤ改正時点では車内で降車駅を車掌に申告し乗車券を発行する方式だった。これが2022年春ダイヤ改正から全席指定席となった。このことは大きな変化である。

▲乗車整理券時代のAシート

▲運行開始2日目のAシート

対比的な考察

Aシートが今後本数を増やしていくのにあたり考えられる障害を列挙する。その際、京阪特急プレミアムカーとJR東日本首都圏のグリーン車自由席を引き合いに考える。

①乗車までの冗長さ(ないほうがよい)

料金券を購入する手段・方法・場所などを総合的に考慮するもの。車掌負担も考慮する。
これは車内発券から指定席化で減ったといえる。事前に買っておくことができるようになったことで車掌の負担も減るし、チケットレス化も達成している。
京阪特急の場合もネット予約はあった一方で、当初は特急停車駅の窓口で現金購入することが原則となっていたが、クレカ・コード決済・ICカード専用の券売機が乗車口付近に設置されたことで便利になった。グリーン車自由席はSuicaグリーン券システムを見ればわかるようにかなり高度化されているといえる。
もしAシートがこのレベルまで高度化しようとすると各新快速停車駅(野洲~姫路で22駅)の乗車口付近に券売機を設置するか、車内にICカードリーダを設けることになる。いずれにせよ更なる投資が必要になることに違いはない。

②ダイヤ乱れ時の対応

ダイヤ乱れ時も料金を払った者が乗車できるのか、あるいは開放するのか、また払い戻しはどうするのかなどである。
ここは指定席化したことで問題が増えた。例えば30分に1本Aシートを設定していて、30分遅れでやってきた電車に乗るとなる場合、どちらの指定席券が必要なのかがわからなくなる。また、Aシート非連結の運用であるところにAシートが入った場合には無料開放扱いとなっている。
京阪プレミアムカーの場合は締切扱いとしている。しかしこれは京阪電車の運休日数が少ない(試しに京阪電車の運行情報を遡ってみれば、2022年で京阪線の運休が生じた日数は計画運休2日を除いて9日確認された)、JRの場合、運行範囲が広いこともあって、ダイヤ乱れの頻度も高くならざるを得ない。
グリーン車に関しては本数の暴力とでもいうべきか。遅れてこようが運用線区ではほぼすべてにグリーン車があるのみならず自由席であるために指定席のような問題は生じない。

③車両運用の流動性

流動性が低いほうが確実なシステム運用となる。
京阪特急の場合、8000系に導入した段階では運用を固定している。現在も8000系、3000系でそれぞれ運用が固定されている。また車両増結の問題が生じない。
グリーン車に関しては横須賀線電車(E217,E235系)以外は4,5両目で10両編成か10+5両編成と統一されている(基本編成にグリーン車、附属編成は普通車)ためこれも問題はない。
さて、JR西日本の場合はここが本数増便のネックとなっている。
・新快速は姫路ー米原・近江今津間で原則12両、姫路、網干、米原、近江今津で解結し4,8両で運転する
・夕方に大阪駅を発着するもの、京都駅で解結し湖西線敦賀・米原行きになるものが上記の例外
・他方で快速は4~12両編成が様々である
・本線区間では新快速と快速は共通の車両である
・現在のところ、快速と新快速の運用は未分離である(特に早朝深夜は快速、残りは新快速としての運用があるといったパターンが結構多い)
・かといって8両編成が基本編成、4両編成が付属編成のような考え方でもない(6両編成も居る)
などという事情があって、これがある程度の解決を見せない限りAシートの更なる増発は難しい。

例えば
・新快速の運用と快速の運用を完全に分離する
・快速列車にAシート連結の車両が入ることを許容する(Aシートとして利用or回送or無料扱い)
などを行えば本数は一挙に増やすことができるだろう。

そのうえで増便の検討にあたってAシートのコンセプトが若干不明瞭というのは気になるところである(どの時間帯を中心にどのように本数を増やすか?にかかわる)。京阪特急は観光需要や途中駅からの着席保障などを主眼に置いてそこにかなり豪華な座席をもって付加価値を実現している。そのようなコンセプトが意義がそこまではっきり見えていない。
今のところ大阪ー姫路間で通勤時間帯に合わせて本数を増発していることになるので、通勤時の着席保障の充足ということが言えそうではある。
そのように考えるとで野洲より北、米原方面へのAシートの延長がいまだ実現していないこともある程度納得できる(JRが内々に考えていれば別だが)。

今回のAシート編成の新造を受けてまた更に様子見のフェーズに入ると思われるのでこの考察をふとした時に思い出していただければと思う。

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【参考:Aシート導入後の変遷】

2019年3月ダイヤ改正:Aシート導入 車両は223系電車の改造による

着席定員制で料金は500円。空きがない場合などにデッキに居る場合には追加料金は不要。

乗車整理券を車内で車掌から購入する方式で、降車駅を申告して購入し発券してもらうという次第。

時刻は以下の通り

平日

網干7:22-姫路7:35-三ノ宮8:20-大阪8:48-京都9:17-野洲9:49

野洲10:59-京都11:30-大阪12:00-三ノ宮12:22-姫路13:-02

姫路18:10-三ノ宮18:52-大阪19:15‐京都19:44-野洲20:16

野洲20:59-京都21:29-大阪22:00-三ノ宮22:23-姫路23:04-網干23:16

土休日

姫路8:40-三ノ宮9:21-大阪9:45-京都10:14-野洲10:43

野洲11:59-京都12:30-大阪13:00-三ノ宮13:22-姫路14:02

姫路16:10-三ノ宮16:52-大阪17:15-京都17:44-野洲18:16

野洲19:28-京都19:59-大阪20:30-三ノ宮20:53-姫路21:34

2020年12月:Aシート46席中12席を指定席として設定(当初の予定は期間限定としながら、連続して延長)指定席料金は840円、ただしe5489にて600円で発売

2021年7月:指定席の設定を20席に拡大。また、新快速3号(平日大阪22時発、土休日大阪20時30分発)のe5489での発売額を450円として設定

2022年3月ダイヤ改正:全車指定席に変更。期間限定でe5489での発売額を500円(3号は450円のまま)に設定

2023年3月ダイヤ改正:Aシートを6往復に増発。主に姫路ー大阪間で通勤時間帯で利用できるように増発。増発用車両は225系電車の新造による。参考文献:
2019年3月16日にダイヤ改正を実施します(2018年12月14日,JR西日本)
有料座席サービス新快速「Aシート」に 期間限定で指定席を設置します(2020年10月28日,JR西日本)
有料座席サービス新快速「Aシート」における指定席の設置を春期間も継続します。(2021年1月22日,JR西日本)
有料座席サービス新快速「Aシート」における指定席の設置を夏期間も継続します。(2021年5月21日,JR西日本)
有料座席サービス新快速「Aシート」における指定席の設置を秋期間も継続します。(2021年8月20日,JR西日本)
有料座席サービス新快速「Aシート」における指定席の設置を継続します(2021年10月15日,JR西日本)
2022年3月12日にダイヤ改正を実施します(2021年12月17日,JR西日本)
2023年3月18日にダイヤ改正を実施します(2022年12月16日,JR西日本)
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