輸送密度とICカードを見る ICOCAの例から

ICカード

JR西日本は最近ICOCA導入に本気である。今回は輸送密度と導入時期の差を見ていきつつ、今後の導入線区を推測する。データは「データで見るJR西日本2023」より引用した。

線名区間輸送密度ICカード導入年
東海道大阪~神戸319,6612003
東海道京都~大阪285,0842003
環状全線249,8742003
山陽神戸~姫路180,3102003
阪和天王寺~日根野136,0832003
JR東西全線107,6312003
東海道米原~京都100,9792003
関西王寺~JR難波93,8182003
桜島全線83,4762003
福知山尼崎~新三田77,9262003
片町全線66,0272003
おおさか東新大阪~久宝寺39,7942008/2019
山陰京都~園部37,3602003
山陽白市~広島37,3232007
山陽広島~岩国35,9522007
宇野岡山~茶屋町34,5912007
山陽岡山~福山31,2012007
湖西全線29,1552006
阪和日根野~和歌山28,5812003
山陽瀬戸~岡山28,4712007
奈良全線25,7142003
山陽姫路~上郡23,9242003/2018
関西加茂~王寺23,7782003
本四備讃茶屋町~児島22,4862007
北陸敦賀~福井21,8512018
北陸福井~金沢20,9782017/2018
北陸近江塩津~敦賀20,0952006
広~海田市18,8882007
関西空港全線16,3972003
可部横川~あき亀山15,9342007
草津貴生川~草津15,5232003
山陽福山~糸崎15,3742007
福知山新三田~篠山口10,3302003
阪和鳳~東羽衣10,0942003
北陸米原~近江塩津9,6882003/2006
赤穂長船~東岡山9,1292007
伯備倉敷~備中高梁8,6982007
山陽糸崎~白市8,6742007
和歌山王寺~高田8,6142003
芸備下深川~広島8,5292007
赤穂相生~播州赤穂7,9562003
山陽兵庫~和田岬7,9532003
山陽上郡~瀬戸7,6812007/2018
播但寺前~姫路7,5392016
山陽新山口~下関7,3892023
山陽岩国~新山口7,2022022/2023
紀勢白浜~和歌山6,7972015/2016特/2020
姫新姫路~播磨新宮6,6862016
加古川加古川~厄神6,5052016
福塩福山~府中5,8612007(一部)
吉備岡山~総社5,1522007
山口新山口~宮野5,1182023(特急)
山陰米子~出雲市4,8032016
桜井全線4,6372005
山陰園部~福知山4,6102021(特急)
紀勢和歌山~和歌山市4,0962017
和歌山五条~和歌山3,7742020
宇野茶屋町~宇野3,6722019
伯備備中高梁~新見3,6102021
福知山篠山口~福知山3,4742021
七尾津幡~和倉温泉3,4282021
山陰鳥取~米子3,2262025(一部)
舞鶴東舞鶴~綾部2,9852021(特急)
津山津山~岡山2,911なし*
山陰福知山~城崎温泉2,8052021(特急)
加古川厄神~西脇市2,7762016
伯備新見~伯耆大山2,6862016(特急)
智頭智頭~鳥取2,589なし
城端全線2,481なし*
草津柘植~貴生川2,1662018
山陰小串~幡生2,164なし
氷見全線2,157なし
和歌山高田~五条2,0902018
宇部新山口~宇部2,037なし
米子~境港2,0002019
高山猪谷~富山1,830なし
赤穂播州赤穂~長船1,7262018
三原~広1,6002007
岩徳岩国~櫛ケ浜1,071なし
芸備三次~下深川9882007(一部)
播但和田山~寺前9722021(特急)
小浜全線864なし
関西亀山~加茂8642021
山陰出雲市~益田860なし
姫新播磨新宮~上月822なし
紀勢新宮~白浜7932016特/2021
山陰浜坂~鳥取768なし
山陰城崎温泉~浜坂721なし
姫新津山~中国勝山640なし
山口宮野~津和野495なし
山口津和野~益田417なし
姫新上月~津山386なし
美祢厚狭~長門市377なし
小野田小野田~居能 など371なし
芸備備後庄原~三次327なし
越美北全線318なし
山陰長門市~小串/仙崎273なし
加古川西脇市~谷川237なし
木次宍道~出雲横田237なし
山陰益田~長門市231なし
福塩府中~塩町160なし
姫新中国勝山~新見132なし
智頭東津山~智頭130なし
大糸南小谷~糸魚川108なし
芸備備中神代~東城89なし
芸備備後落合~備後庄原75なし
木次出雲横田~備後落合54なし
芸備東城~備後落合20なし

流石関西の路線は輸送密度が高く11番目の片町線まで全て2003年導入で、関西の路線、その先おおさか東線、山陽線などが続き、JR西日本がICOCA導入に積極的になった2015年より前(おおさか東線開業の2008年まで)に導入された路線ばかりである。

輸送密度の高さの割に導入が遅かった路線としては北陸本線が挙げられる。敦賀~福井~金沢間は約2万人であるのに、導入は2018年までずれ込んだ。金沢~富山も1.5万人程度あったが導入は三セクに移管されてからである。

輸送密度順で高いところ、おおよそ輸送密度8000辺りの路線(病禍前であれば9000~10000程度か?)までは2007年までに導入されている。当初は本当に輸送密度の高い路線のためだけの近距離のためのシステムであったと言える。その先は広島・大阪から徐々に伸びる形で増やされている。

和歌山~海南間に導入した2015年を皮切りに、播但線・姫新線・加古川線に導入した2016年以降はかなり積極的にICOCAエリアの拡大がみられる。輸送密度の区間の区切り方によるだが、福塩線の電化区間・福山~神辺~府中間のうち、神辺以北は導入がまだである。

そのさき輸送密度の高さの割に導入が遅れている路線と言えば、山口線・山陰線・舞鶴線の特急に関係しない区間、そして、山陰線の鳥取~米子間、津山線である。後2者は部分的な導入決定(鳥取~倉吉間及び津山駅のみ)にとどまっている。

ICカードの導入が決まっている線区といえば氷見線及び城端線であろう。その点、山陰線下関口、智頭線はやや可哀想なところである。前者についてはともかく、後者は智頭急行線との兼ね合いもあったりして導入に躊躇している面があるのだろう。

宇部線は駅間が短い線区というだけでなく、運賃計算経路の問題もあってなかなか導入に踏み切れないのだろうか(ICOCAは最短距離計算、きっぷは経路計算というのが現在のJR西日本のスタンスになっているようである)。高山線に関しては富山市が乗り気であればすぐ導入されそうな雰囲気もあるが、今のところ直接の話題はない。富山市総合交通計画(リンク)を見れば短期的には検討、中長期的には実施としていることを見れば、本当にJR西日本の余力次第というところである。

その先は線路の繋がり方などにより導入順序が決まっているところであるが、呉線(三原~広)は岡山・広島エリア一斉導入に合わせての導入であり、輸送密度の割には導入が早い区間である。ここから先の導入はかなり遅れている。芸備線の下深川~狩留家間、播但線の非電化区間の特急停車駅はやや特徴的であろう。元々狩留家~広島間で輸送密度を示していた際は総計で8000人程度であった。

それ以降の関西線・紀勢線は両方とも車載ICカードリーダーを導入した線区である。新型車両導入に合わせたICOCA導入を行ったきのくに線と、キハ120系にくっつけた関西線ではまた事情が異なると思われるが、どちらも大阪近郊から近い線区であるのに導入が遅れていた線区とみることも可能であろう。

それ以下の輸送密度となっている線区は導入が進んでいない。そもそも鉄道が好ましい輸送形態であるかどうかという疑問をJRが呈している線区でもあるところが多い。ただ、自治体がやる気の区間と言えば姫新線が思い起こされる。姫新線の姫路~播磨新宮間は既にICOCAが導入されている。しかし、同様に新型車両キハ127型が導入されているところの播磨新宮~上月間はICOCAは導入されていない。今後の活性化の施策によりけりということであろう。

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