京葉線ダイヤ改正問題、直近のダイヤ改正から分析する

2024年4月26日JR各社/三セク国鉄

京葉線の「通勤快速」問題を少し深堀りして見ていこう。早朝の快速はやはり運転するということになった。
2024年3月ダイヤ改正内容の一部変更について

京葉線の快速電車の歴史を見ると
・2010年冬ダイヤ改正(リリース)から、昼間毎時1本が蘇我~上総一ノ宮間延長運転開始
・2015年春ダイヤ改正(リリース)から、平日の快速電車を毎時2本から3本に増強
という歴史的経緯はさておくとして、現在の話を見てみると、
2022年春ダイヤ改正(リリース)から
・平日の快速電車を毎時3本から2本に削減
・君津6:42発特別快速、上総一ノ宮6:27発特別快速を各駅停車に変更
(Cf.総武線特快はこのダイヤ改正で終了)
2023年春ダイヤ改正(リリース)から
・上り快速を18時台に終了
・一部の快速電車を各駅停車に変更
2024年春ダイヤ改正(リリース)から
・10~15時台を除き快速運転を中止
・君津6:12発、上総一ノ宮6:03発東京行きは快速のまま
となる。

2023年春ダイヤ改正での「一部の快速電車を各駅停車に変更」について、あまり詳しい説明やダイヤイメージがなかったため、ひとまず図示してみた。
画像1
▲2021年~2023年平日ダイヤ東京駅

画像2
▲2021年~2023年ダイヤ土休日東京駅

画像3
▲2022/23年ダイヤ蘇我駅(快速については始発駅を記載)

それぞれ快速電車の時刻を記載し、各駅停車は本数を示す形とした(蘇我駅からの新習志野行きは省略)。大体のイメージはこうなっている。

平日下り
・6時台の快速2本を削減、普通電車1本に置き換えている
・17時台以降の快速を毎時1本ずつ削減、それぞれ蘇我行きや海浜幕張行きなどに代わっている時間帯もある
土休日下り
・6時45分発快速を削減、西船橋行きに相当する電車に変更?
・17時台後半以降快速の本数を半減(内房・外房直通以外廃止)、それぞれ蘇我行き、海浜幕張行きなどに変更。
(2021年春改正の蘇我駅時刻表を入手することができませんでした…)
平日上り
・21年春改正→22年春改正で通勤快速/快速から置き換えられた普通電車は7時台2本に書かれている
・18時台後半以降の快速電車が全廃。減少分の約半数が普通電車に置換。

さて、上記を踏まえて2024年春ダイヤ改正のリリースを見ると、
・平日の快速運転本数は33本削減、土休日の快速運転本数は40本削減
・快速通過駅の停車本数は平日29~30回、土休日37~40回増加
ということで、今までのダイヤ改正でやっているような「快速約2本を削減する代わりに普通電車1本に変更」というほどの無茶なことはしていない。内房線、外房線の直通快速もすべて各駅停車に変更するとしている。外房線の快速通過駅の停車本数もそれぞれ増加している(10~15時台以外の快速電車が確かに各駅停車に置き換えられていることは上記ダイヤを見てみればだいたい合っているようである)。

今回のあるいみドラスティックなダイヤ改正は複数の問題を抱えているために、少し分解して見てみる。朝の通勤時間帯の内房線・外房直通快速・通勤快速は
・蘇我駅朝6時台の2本の快速  ←ダイヤ改正修正により存続
 ※上総一ノ宮発は外房線内快速から各駅停車に変更
・蘇我駅朝7時台の2本の通勤快速
(・22年春改正で各駅停車になった2本)
である。
通勤快速については、外房・東金線からの電車は上総一ノ宮からみて19分、成東からみて12分伸びている(上総一ノ宮発が余分に伸びているのは外房線内も各駅停車になったからである)。内房線からの電車も14分伸びている。そもそも通勤快速としては東京駅8時26分着・8時39分着と若干遅めではある。なお、22年春改正で廃止になった通勤快速2本は東京7:59着・7:47着であった。
次に夕方の通勤快速・快速についてみる。こちらも20分ほど所要時間が伸びている。そのほか上総一ノ宮行きの快速電車(1時間に1本運転)も一掃するというわけである。

昼間時間帯以外の快速電車を見る。つまり土休日の8~9時台、16~18/20時台などを念頭に見る。こちらも2023年春ダイヤ改正で本数をじわじわ減らしているところになっている。幕張メッセでのイベントに影響を出ていることからすると16時台・17時台の快速電車があってもいいようには見えてしまう。

直接ダイヤ改正に影響を受ける人間ではないが、さらに進んでJR東がなぜこのようなダイヤ改正をしたのかを考えてみる。まずは京葉線内の乗降客数を見てみる。2022年度のデータを纏めてみると下記のようになる。

駅名 快速 利用者数
東京 346658
八丁堀 27391
越中島 4807
潮見 12718
新木場 60442
葛西臨海公園 12560
舞浜 63906
新浦安 47382
市川塩浜 7342
二俣新町 5058
南船橋 21123
新習志野 11330
幕張豊砂 未開業
海浜幕張 52058
検見川浜 13870
稲毛海岸 18519
千葉みなと 15354
蘇我 29462
鎌取 17958
誉田 6326
土気 10706
大網 8293
永田 786
本納 1402
新茂原 1171
茂原 8689
八積 604
上総一ノ宮 2566

京葉線内の快速通過駅を見ても、利用者数が2万人を超えている駅がないことを踏まえれば、「快速通過駅の利用者増加に伴う平準化」という理由ではなさそうである。武蔵野線直通電車で本数がかさましされている区間が含まれていることを考えればなおの事である。快速通過駅の利用者を増やすという意図が読み取れるリリースでもなかったように思われる。しかし、ダイヤ改正修正リリースを見てみると、わざわざ、ダイヤ改正後の快速通過駅の終日乗車可能回数を書き直しているため、快速通過駅の利便を図るダイヤ改正であるということを言いたげでもある。

次に通勤快速をなくしたり、内房線、外房線直通快速を各駅停車に変更する理由を考えてみる。こちらについては遠近分離の必要性がなくなったからという理由でもいいだろうとは思われる。ただ、勝浦や上総湊など、通勤快速が唯一の東京直通電車であるものまでを一挙に廃止したことは疑問が残るところではある。通勤快速通過に伴う京葉線内の不便をケアする必要だけであれば海浜幕張停車などで解決したところであるが、そこが妥協点にすらならなかったという見方でよいだろう。

ところで、このような快速廃止でどれくらいメリットがあるのか。ここまで散々デメリットに近いことばかり記述してきたが、例えば普通電車は片道50分、快速は45分程度であるが、通勤快速2本に抜かれる普通電車は1時間かかっている。このようなところで停車本数増加以上のメリットがあるかのようなところではあるのだろうと思われるが、そのような記載がニュースリリースにない。せめてその程度のメリットを強調するくらいのことはしていいはずである。
また、朝夕通勤時間帯のダイヤイメージを示せばまだ違ったのかなとも思うところである(千葉県内の市町、千葉県とのディスコミュニケーションがあったことからしても、そもそも説明する気や説明の必要性を自覚していなかったのではと思わざるを得ない)。例えばというわけではないが、2022年春ダイヤ改正のJR東海のリリースなどは好例なのではないかと思っているところである。