JR西日本 路線見直し基準について社長が明言 朝日新聞記事より
朝日新聞にまた大きい記事が載っていた。
JR西日本社長、長谷川氏の独自インタビューであるが、輸送密度2000人以下の路線に関して優先的に輸送体系の在り方を見直すという方針を示した
都市部と新幹線で黒字を出し、ローカル線を維持するという形が取れなくなっているためだ。
社長曰く、
・利用者が2019年以前比で9割より戻らないと社全体として赤字になる
・鉄道は大量輸送機関であるから不便であれば地域交通に関して議論が必要
・輸送密度2000人以下の路線は鉄道としての特性を活かせず非効率だ
・2000人以上の輸送密度が損益分岐の水準ではなく、もっと上である
・自治体や国の(財政的)関与がない現状では『とりあえず維持』になりがち
・自治体がこれら線区を支援するとして、なぜ支援するかの議論には必ずなる
・廃線する場合、代替輸送機関の運営等を支援する方針
・国の関与もこの病禍の中で機運が出てきている
・鉄道の仕組みは柔軟性を欠いている
そして2019年度、20年度のデータで見るJR西日本を見れば以下の線区が輸送密度2000人を割り込んでいる。(太字が2019年度から連続して割り込んでいる区間) 多すぎるので逐一改行はしない。
・小浜線・越美北線・高山線(猪谷~富山)・大糸線・山陰線:城崎温泉~鳥取・同:出雲市~小串~下関・関西線:亀山~加茂・和歌山線:高田~五条・紀勢線:新宮~白浜・加古川線:西脇市~谷川・姫新線:播磨新宮~新見・播但線:和田山~寺前・赤穂線:長船~播州赤穂・伯備線:新見~伯耆大山・芸備線:備中神代~下深川・福塩線:府中~塩町・因美線:東津山~智頭~鳥取・木次線・呉線:三原~広・岩徳線・山口線:宮野~益田・宇部線・小野田線・美祢線
輸送密度という基準にあまり慣れていない読者にその目安を示すとこれら路線の運行本数は多くとも20本程度である。20本あれば毎時1本、朝夕ラッシュに30分間隔といった運行ができる。勿論少ない側は日3本である。
過去に似たような議論をしているのでそちらの記事を最後に貼っておくが、
・線路の保守に関しての協力を求める、最終的には上下分離を目指す
・経営改善と称して更なる減便をしてからでは廃止は免れにくい
・キハ120系気動車を運用する線区が多くその車両更新が一つの山場になる
といったあたりがまずもって考えられる。
しかし、記事によれば自治体が支援を検討しても現実的には利用者の低迷が続く区間を維持するかどうかはわからない、というより難しいとしている。
国鉄時代の「特定地方交通線(=赤字による廃止路線)」の基準は以下の通り
平均輸送人員(輸送密度)が4000人以下であること。ただし
①ピーク時の乗客が1時間辺り片道1000人を超える
②代替輸送道路が未整備
③代替輸送道路が積雪で年10日以上通行不可能
④平均乗車キロが30kmを超え、輸送密度が1000人以上
⑤貨物輸送密度が日4000トン以上(この場合、幹線扱いとなる)
は除外する
この基準は路線全体で判断して実施したもので、画一的な基準でかなりざっくり切り倒したものであるためこのために廃止対象となった路線がいくつかある(典型例として伊勢鉄道こと旧伊勢線)
とはいえこの基準を念頭におくと②は今かなり少なくなっていて、③は越美北線が当時該当。⑤は当時美祢線が該当していたが最早貨物輸送は実施していない。
恐らくこの除外基準に当てはまる線区はほとんどないようにも考えられる。というのも①に関して当てはまる路線は恐らく区間中に輸送密度の高い路線を抱えていたから、というのがあるが、路線を細切れにして考える場合にはこの基準が空文化すると言えるからである。
まだバス等の代替輸送機関にJR西日本が参画する意思があるだけマシともいえるが、自治体としては「我が町のシンボル」的に考えている面もある鉄道の存廃問題に真剣に取り組まないといけなくなったと言えよう。
今回の社長インタビューが自治体への牽制としてどれほどの意義があったかはこれから徐々に明らかになる。
参考記事:
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません