京都市交通局 経営検討委員会の議事録を読む。 【値上げ/新車】

2024年4月26日ダイヤ改正

先日も取り上げた話ではるが、京都市の財政改善のために「京都市交通局市バス・地下鉄事業経営ビジョン検討委員会」が開かれており、8日に行われた第3回の議事録を読んでいこうと思う。

まず「市バス・地下鉄事業経営ビジョン」の改訂版では、今後の需要予測を基に
バスに関して2022年春に急行系統の休止、深夜バスの廃止、昼間ダイヤの減便を実施、
地下鉄に関して、2022年秋に昼間や夜間の減便の実施を行い、
更に駅改札の業務削減や券売機削減などによる人件費維持費削減を実施。
また一日乗車券などの企画乗車券の見直しやICカードの推進、広告収入増加を行う。

それでもなお、運賃改定を行う必要があるとし、バスで20円、地下鉄で30円の値上げを見込んでいる。
これらを実施した結果での累計資金不足の解消は(特に地下鉄で)なお当面先にはなるが、それでも実施の必要があるということだろう。

傍聴者や、地下鉄利用者からは厳しい声がある。
「敬老乗車証などいらない。」「地下鉄に関して,新車を導入するのではなく,他の自治体のお下がりで対応す
べきである。」「職員の給与をカットすべきである。」「民営化もしくは交通局解体を望む。」などなど…
烏丸線新車に関してはかなり辛辣で、
「違約金を払ってでも凍結すべき」「広島市内では京都の市電が今でも走っている。」「京都の『始末』という言葉を思い出してほしい」

勿論新車に関してはトータルコストを考えれば今からの導入が経済的であるということ、安全のための必須の投資であることを回答している。(ただやはりイニシャルコストへの印象の集中が大きいのであろう…)

議事録では敬老乗車証やバスの均一運賃制に関して大阪市の例を挙げての議論や、上記の値上げを短期的でも行うことが効果的であることなど書かれている。また累積資金不足の将来の最大値を900億円以下に抑えることを財政目標にすることの意義についても論じられている。
また値上げを令和6年(2024年)からではなく、もっと早期に実現すべきだという意見もあった(ただ、実現に時間がかかるという手続き上の問題があるようだ)

最後に議事録で印象に残ったところを引用しておく。観光需要に頼ってきたことの大きさを物語るものであろう。

京都は昨日今日始まった観光都市ではない。江戸時代以前の中世の時代から観光客は来ており,その時代に合わせて観光と共存してきた。この20年,30年の間においても,1990年代に21世紀には観光ビッグバンが起こると言われていた。それは当たり前のことで,中開発国の所得が上がれば平均寿命が延び,お金にも余裕がでてくる。寿命が延びると行うのが観光である。世界中がそのような状況の中,観光ビッグバンが起こることがわかっていたため,まず観光交通対策をしたわけである。
新幹線,次に高速道路からマイカーで来る観光客が京都中に溢れたため,観光客を市バス・地下鉄にシフトさせ,公共交通で観光してもらうということを行い,それが大成功したのである。観光が止まっている今こそ,観光が戻ってきた時にどうしていくかということを考える新しい転換の時期ではないかと思う。これだけ精緻によく整った市バス・地下鉄がある以上,観光客が戻ってきたときに,これを絶対維持する必要がある。

考察すべき事柄としては、これらの財政状況を今までほったらかしにしていた、という印象と、そこに相まって「烏丸線のあの伝統芸能を用いた”高コスト”な新車」というイメージがやってきたことが大きな問題だろう。
議事録にも挙がっていたが、平成21年から経営改善をし続け増税以外の値上げを回避してきた。そのギリギリの瀬戸際、あるいは観光需要の伸長によって上向いてきたところと叩き潰され今の問題が急に重たいものになったのだろう。
あとは、京都市交通局の情報発信力不足もあるだろう。烏丸線新車の導入の意義を(このブログをここまで読んでいるほどのオタクであればわかるというのは置いておいて)財政悪化の事情が急浮上した段階で「今置き換える、全車両置き換えることが経済的で、古いものを長く使うとむしろ不経済になってしまう」というメッセージに転換できていなかったのだろう。そうでなければ「高すぎる新車」というイメージだけが先行してしまうのは仕方あるまい。

とはいえ、ダイヤ改正、地下鉄が22年秋の実施予定であることは趣味の観点からは大きいだろう。
なお今のダイヤは
烏丸線:毎時8本(うち3本がそのまま竹田から近鉄線直通、2本は普通・新田辺発着、1本は急行・近鉄奈良発着)
東西線:毎時8本+京阪京津線直通電車3本
である。もし減らすとすれば毎時6本、あるいは京津直通の調整が穏当ではあるが…