国電(E電)区間って結局どこなの??調べてみた

2024年4月26日JR各社/三セク国鉄

国電とは、国鉄電車の略で東京、大阪の2大都市圏で高頻度ダイヤで大量輸送を行う線区のことを指していた。
しかし、広島地区をはじめとする、国電を各地方で模範としたシティ電車が各地で広まると国電の指す範囲が不明確になり、民営化以後は関東圏では一応E電という言葉が作られたものの広まらず関西圏ではより広い範囲を指して「アーバンネットワーク」を呼称するなどその範囲は不明確になっている。

そこで今回は、一度「国電」区間はどの線区を指すのか?を今一度整理したいと思う。

基本的な国電の特徴は
①東京、大阪2都市圏のみのものであること(名古屋圏は含まない)
②電車と”列車”が系統分離している場合、電車線のみを指す
③運賃制度の「電車特定区間」が設定以降新線以外で増えていないため、ある程度の基準になる
④特に東京圏では列車番号を「始発駅の時刻+運用番号」にする電車ダイヤを用いている
⑤特に東京圏では必ずしも運行本数が多い路線だけとも限らない
これらが挙げられるだろう。

今回は1964年、1988年の時刻表も利用して「国電」の指す線区をはっきりさせようと思う
(多分に諸説アリを含むかもしれないが…)
註:当時時刻表には「あか色の電車」とされたもののうち、敢えて朱色の電車と表記したものがある

東京圏
・山手線(田端ー新宿ー品川ー東京ー田端):ウグイス色の電車
・京浜東北線(大宮ー東京ー横浜):水色の電車※1
・根岸線(横浜ー磯子ー大船):水色の電車
・赤羽線・埼京線(大崎ー池袋ー赤羽ー武蔵浦和ー大宮):緑色の電車※2
・中央線(御茶ノ水・東京ー三鷹ー立川ー高尾):朱色の電車
・青梅線(立川ー奥多摩):朱色の電車
・五日市線(拝島ー武蔵五日市):朱色の電車
・総武線(御茶ノ水ー千葉):黄色の電車※3
・常磐線(※4ー我孫子ー取手):ぎん色の電車※5/青色の電車
・南武線(川崎ー立川・尻手ー浜川崎):黄色の電車
・鶴見線(鶴見ー扇町ほか):黄色の電車
・横浜線(桜木町ー東神奈川ー八王子):黄緑色の電車
・横須賀線(東京ー横須賀ー久里浜):濃紺色の電車※6
・武蔵野線(市川塩浜・海浜幕張ー西船橋ー府中本町):朱色の電車※7
・京葉線(東京ー蘇我):赤色の電車※8
※1:並行する東海道本線(湘南電車)は含まない
※2:池袋ー赤羽間は埼京線開業前では確実に含む。埼京線も電車ダイヤで、1988年時点で国電扱いを受けているため含むとする。ただ、湘南新宿ライン(旧来の”列車”扱い)が一部並走するためややこしい

※3:元々は東京ー高尾間と御茶ノ水ー千葉間それぞれ各停運転。昼間に中央線電車が中野まで、次いで三鷹まで快速運転する時間帯に後者が延長運転する形が、快速運転時間が終日となったため中央線快速(朱色)と中央・総武線各駅停車(黄色)という原状となった。
※4,5:元々は上野発着の常磐線各駅停車を北千住から営団/メトロ千代田線へ直通。残る快速電車は土浦・水戸方面の中距離”列車”が快速電車と停車駅を合わせる形で補完している。
※6:横須賀線は中距離電車であり、かつ1等車(→グリーン車)を連結しているものの、早い時期から電車運転となったためまた電車ダイヤを組んでいたため、国電扱いをするのが一般的。また、中央線快速と親和的な総武線各駅停車は国電であることに間違いはないが、新線建設によりできた東京ー千葉間総武線快速は、その先房総各線と直通することが多いこともあってか判断がばらける。また山手線のように単色ではなく、濃紺とクリーム色のツートンカラーでもって「横須賀色」とするのが通例。
※7:市川塩浜・海浜幕張ー西船橋は正確には京葉線
※8:千葉みなとー蘇我間のみ東京電車特定区間を外れる。

逆に含まないとする(のが一般的だけどよくわからなければ迷う)路線は
・相模線(1964年では非電化であるものの国電ページに挟まって掲載)
・川越線(現在大宮川越間は埼京線直通となっている)
あたりである。

大阪圏
・東海道本線/山陽本線(京都ー大阪ー神戸ー西明石):水色の電車※1
・大阪環状線(天王寺ー京橋ー大阪ー西九条ー新今宮ー天王寺):朱色の電車
・桜島線(西九条ー桜島線):朱色の電車
・阪和線(天王寺ー和歌山・鳳ー東羽衣):水色の電車
・関西本線(JR難波ー天王寺ー奈良ー加茂):黄緑色の電車※2
・片町線(片町ー京橋ー長尾ー木津):朱色の電車※3
※1:「京阪神緩行線」という呼び名は使われない。また、関東でいう東海道線(湘南電車)と京浜東北線のように完全な系統分離がされていないことや、緩行線(電車線)が各駅停車にだけに使われているわけではないことなどが理由に挙げられる。
※2:電化が他の線区に比べて遅かったたものの湊町(→JR難波)ー奈良間で気動車による頻繁運転があった。そのため奈良ー加茂間を入れるかどうかは判断が分かれるところ。
※3:片町ー京橋間廃止。また長尾ー木津間はJR民営化後の電化で、電車特定区間外ではあるが今やこの部分も系統が一体化しているため(当時の国電の基準で言うと)含むと言える。

民営化以降にできた国電同様の性格を持つような新線は
・JR東西線(片福連絡線:京橋ー尼崎)
・おおさか東線(大阪外環状線:新大阪ー放出ー久宝寺)
おおさか東線に至っては、2008年の部分開業から13年、2019年の全線開業2年の間、線内完結列車(普通電車)は国鉄型電車(201系、過去には103系)だけで行われてきたので、もはや国電だったと言ってもわからないくらいである(2022年春以降に普通に221系電車が入る予定)

一方、含まないとする(のが一般的だけどよくわからなければ迷う)路線は
・福知山線(尼崎ー新三田)
である。今でこそJR東西線や東海道線(JR京都線、神戸線)から直通を受けて普通電車が都市ダイヤとして運転されるが、設備の近代化(電化複線化)が実施されネットダイヤが敷かれるになったのが国鉄晩年であってかつ電車特定区間に含まれ
ていないため、国電として扱われることは少ない。

参考までに1964年10月時刻表で頻繁運転のため運転間隔だけを示し始発終電以外省略となっている線区(だいたい元私鉄路線)を挙げておく。
・小野田線支線(雀田ー長門本山):20-40分毎
・富山港線(富山ー岩瀬浜):15-40分毎→現在は富山地鉄の市内線に編入
・石巻線(仙台ー石巻):仙台方12-15分毎、30分毎、60分毎石巻方