意外と参考になりそうな国鉄運賃法を読んでみる
鉄道運賃制度の話ばかりで申し訳ないが、最近調べているのがそればっかりということなのでご勘弁願いたい。イギリスなどでは物価上昇に合わせて運賃を改定する制度、プライスキャップ制(国交省リンク)が取られている。これに似た制度が過去に国鉄で取られていたのでそれを観ようというものである。昭和52年までは法律で賃率を直接定めていた。例えばこのように
鉄道の普通旅客運賃の賃率は、営業キロ一キロメートルごとに、五百キロメートルまでの部分については五円十銭、五百キロメートルを超える部分については三円九十銭とする。(昭和51年法律75条での3条1項)
プライスキャップ制は昭和52年法律第87号で追加された。その条文は以下のとおりである。長すぎるので、カッコ書きを適宜省略したものにしている(元の条文はこちら)。
(賃率等の決定の特例)
第十条の二 当分の間、鉄道の普通旅客運賃の賃率、航路の普通旅客運賃又は車扱貨物運賃の賃率は、第三条第一項、第四条又は第七条第二項の規定にかかわらず、運輸大臣の認可を受けて日本国有鉄道が定める賃率又は運賃による。
2 日本国有鉄道の一の事業年度の決算における繰越欠損金の額が、昭和五十一年十一月五日に日本国有鉄道法第五十四条の五の政令で定められた債務の昭和五十一年三月三十一日における未償還元金の合計額に相当する額を超えないこととなつたときは、当該決算の完結後、前項の規定により新たな賃率又は運賃を定めることはできないものとする。
第十条の三 前条第一項の規定により賃率又は運賃を定めることができる間においては、運輸大臣は、賃率等の認可をしようとするときは、実施年度において実施されるすべての新たな賃率等の実施による収入の増加見込額の総額が、実施年度の日本国有鉄道の経費の増加見込額を超えないように、これをしなければならない。
2 前項の新たな賃率等の実施による収入の増加見込額は、新たな賃率等が実施年度の初日から末日まで実施されるとした場合における実施年度の収入の見込額から、新たな賃率等の実施により廃止される賃率等が実施年度の初日から末日まで実施されたとした場合における実施年度の収入の見込額を控除して得た額とする。
3 第一項の実施年度の日本国有鉄道の経費の増加見込額は、前事業年度の日本国有鉄道の経費の額に物価等変動率を乗じて得た額から、前事業年度の日本国有鉄道の経費の額を控除して得た額とする。この場合において、前事業年度の決算が完結していないときは、実施年度の前々事業年度の日本国有鉄道の経費の額に物価等変動率を乗じて得た額を前事業年度の日本国有鉄道の経費の額とする。
4 第一項及び前項の日本国有鉄道の経費は、日本国有鉄道法第三条第一項第一号及び第二号に掲げる業務並びにこれらの業務に係る同項第五号に掲げる業務に係る日本国有鉄道の経費に限るものとする。
要は
・10条の2第1項で、賃率・運賃は運輸大臣の認可制とし直している。
・10条の2第2項で、繰越欠損額が昭和50年度末の額を下回るまで認可を受けられるとしている。
・10条の3第1項で、収入の増加見込みが経費の増加見込みを超えないように認可基準を定めている。
・10条の3第2項で、収入の増加見込みの計算方法を定めている。
・10条の3第3項で、経費の増加見込みについて、前年度の経費に「物価等変動率」を掛けて計算している。
ということである。
ここにいう「物価等変動率」は、「日本国有鉄道の経費の変動に影響する物価及び賃金の変動を示す指標として、政令で定めるところにより、実施年度の初日の属する年の前年及び前々年の卸売物価指数、消費者物価指数及び賃金指数を基礎とし、日本国有鉄道の経費の構成を勘案して算定される率をいう。」とされている。
これが現在の日本の運賃制度とはまったく別モノであることはお分かりいただけるだろう。
ところで、イギリスではプライスキャップ制が敷かれているということに触れておきたい(交通経済研究所リンク、またBBCの報道など)。もっとも、労働党政権に交代したことで、イギリス国鉄が”復活”するとかかんとかでこのあたり制度が変更される可能性があることは留保しておきたい。また、プライスキャップが及ぶ運賃は、一部に限られていることも理解しておいた方がよさそうだ。国土交通省が提供を受けて掲載している資料(鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会資料)でも「無規制」の部分がある旨書かれている。
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