大阪シティバスの今後を見ていきたい【10年間の本数維持の顛末】

2024年9月25日未分類

別に何らかの報道があったことを受けて作ったわけではない。単純に気になった話である。
大阪シティバスは大阪市交通局のバス事業を継承している(会社自体は市営バスの運行受託などを以前より行っており、昭和63年に創立。現在株式は大阪市高速電気軌道及び大阪市が保有)。


▲大阪シティバス(素材:写真AC)

その中で、「路線、運行回数、運賃などは原則として少なくとも10年は譲渡時の水準を維持するものとし、その後も本市の交通政策部門が設置する「バス運行にかかる協議体」へ参画し、より良いサービスを提供」とされている。後段については「大阪市地域公共交通会議」を指すものと考えられるほか、交通局時代に出来ていなかったサービスとしてIKEA鶴浜行バス、USJ行バス、関空行バスなどが挙げられる(社会実験として実施されるデマンドバスはOsaka Metroグループの事業である)。

さて、問題となるのは「路線、運行回数、運賃などは原則として少なくとも10年は譲渡時の水準を維持するもの」とされている部分である。現在大阪市から経営移管して5年半以上経過し、そろそろ見通しが立ち始める頃のはずである。
大阪市交通局時代の営業係数はHPに残っており、臨時系統を除いた86系統中27系統が黒字、59系統が赤字である(参照)。


営業係数 事業性 サービス系
100未満 27 0
~199 30 29
200~ 0 11

事業性とあるのは事業性のある路線、サービス系とあるのは地域サービス系路線のことである。全体の営業係数は99とちょうど収支を照らし合わせているところである。
続く営業収支を見ると、平均乗車キロと収益・費用が掲載されている。もっとも営業係数が良いのが62系統(現在平日毎時3本)、58系統(同2本)で営業係数67ある(収益額が最も大きいのは34合計当で、大阪駅前と守口車庫前を結ぶ。)。他方最も悪いのが9系統(出戸から加美を通って地下鉄平野駅方面へ向かう路線で1日15往復程度)で営業係数308ある。
現在の営業係数が不明であるものの、おおよそ状況は同じであると考えられる。すなわち、少数の黒字路線で倍以上の赤字路線を支えている構造であろうと思われる(というか開示してほしい)。

ただ、路線・運行回数が固定されていることが事業の硬直化を招いている面があると言わざるを得ない。特に大阪市バス=シティバスは乗り継ぎ運賃が1乗車と同じになるので、例えば幹線系統と生活路線系統のフィーダー化もかなりやりやすいはずであるし、運転系統を整理することで、一部区間は廃止になるにせよ増便されるというようなことも容易に想像されるところである。しかしそれすらも難しい条件設定になっているのではないだろうか。

お隣の経営が危うい(と喧伝される)京都市バスの取り組みを見てみると、重複区間での運転間隔の調整はもちろん、モビリティマネジメントへの取り組みも進んでいる(特37・52・69・70・南2・特西4系統)。こちらは実際に利用者の増加の例も報告されているところであり、このような活動は公営のほうがやりやすいとはいえ、そのようなことが行われている形跡は大阪シティバスに見当たらない。

参考:
2017年(平成29年)度の路線別営業係数が発表されていたのでまとめてみました(Osaka-Subway.comさん)
2018.4.1 大阪市営地下鉄・バスが変わります!(国立国会図書館ウェブアーカイブ)
バス事業 引継ぎ(民営化)プラン (案)(大阪市・平成29年1月)