ネオ・整備新幹線計画を考える
新幹線といえば東海道新幹線を皮切りに日本の、世界の鉄道の在り方を変えたと言っても過言ではない高速鉄道である。
日本では現在も新幹線の建設が進んでいるが、どの路線を建設するかを決めているのが「整備計画」である。いわゆる整備新幹線のことである。
そしてこの整備新幹線について全路線の計画に目途が立とうとしている。となればその次がどうなるのか、そして整備新幹線の今後がどうなるのかをそろそろ語りたい時期である。今回はそんな記事。
そもそも新幹線の定義とは何か。「全国新幹線鉄道整備法」(以下、新幹線整備法)という法律にその定義がある。2条で
第二条 この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。
としている。この法律ができたのが昭和45年であることを考えれば、妥当といえよう。
新幹線鉄道網の計画は新幹線整備法第4条で「基本計画」として定められている。そしてその中で「整備計画」を定める。整備計画に入った路線が建設されるという次第である。(新幹線整備法はその他には事業者の指名、審議会への諮問、大規模改修の資金などについて定めている。一読されたい方はこちら(e-gov)へ。
ではまず、「基本計画」路線を見ていこう。なお便宜的に現在の駅名に合わせ、またこちらも便宜的に計画当時の既設路線(☆)も名前を含めている。なお、経由地等はこちら(国土交通省PDF)を参照した。
☆東海道新幹線 :東京ー名古屋ー新大阪
☆山陽新幹線 :新大阪ー博多
☆上越新幹線 :東京ー新潟
☆東北新幹線 :東京ー盛岡
★九州新幹線 :博多ー熊本ー鹿児島中央
★九州新幹線 :博多ー長崎
★北陸新幹線 :東京ー富山ー新大阪
★東北新幹線 :盛岡ー新青森
★北海道新幹線 :新青森ー札幌ー旭川
※中央新幹線 :品川ー名古屋ー新大阪
*奥羽新幹線 :福島ー山形ー秋田
・東九州新幹線 :博多ー大分ー鹿児島中央
・山陰新幹線 :新大阪ー松江ー新下関ー博多
・中国横断新幹線 :岡山ー松江
・四国横断新幹線 :岡山ー高知
・四国新幹線 :新大阪ー徳島ー松山ー大分
・九州横断新幹線 :大分ー熊本
・北陸・中京新幹線 :敦賀ー米原ー名古屋
・北海道南回り新幹線:長万部ー室蘭ー札幌
・羽越新幹線 :富山ー新潟ー秋田ー新青森
整備計画に関しては簡単である。☆が既設新幹線であり、★が整備新幹線である。昭和48年に計画され、以降の着工している線区は全てこれである。そしてこれらのうち、九州新幹線(鹿児島ルート)、東北新幹線は全線開通、九州新幹線(長崎ルート)は西九州新幹線として2022年9月開業が決定、北海道新幹線は2030年度開業予定で着工中、北陸新幹線は金沢まで開業済、敦賀まで2024年春開業予定、敦賀ー新大阪間については環境アセスメントが済んでいるところと言える。
となればこの次が気になるところである。「次」というのは2つの観点から言える。
①次に整備計画に乗る路線はどこか
②現行の整備新幹線(既設路線)そのものの今後はどうするか
まず①について。
どこになるのか?を考える前に明示的に省くことができるものがある。
まずは中央新幹線。こちらは整備新幹線ではないが、JR東海がリニアモーターカーでの開業に向け現在工事、折衝を行っているところである。
そして、山形新幹線、秋田新幹線は「ミニ新幹線」として130km/hでの運転となっており、定義上の新幹線ではない。しかし上記の奥羽新幹線の大部分と被るため、これも建設対象となることはないだろう。
ではどこがその計画となりうるのか。平成29年以降国交省内での検討が進んでいる。「幹線鉄道ネットワーク等のあり方に関する調査について」として調査結果も公表されている。
その例として
・新幹線整備による効果の検証
・単線、ミニ新幹線、既設インフラ(例:瀬戸大橋)活用による整備
・在来線の高速化、新在接続(新潟駅を例に)の検討
・単線整備での費用対効果の測定方法(地価などの考慮)
・地域交通自体の検討(LRTや路線バスを含めた交通体系の在り方)
・単線整備によるコスト削減割合、及びケーススタディ
・在来線と新幹線の中間的存在の整備方式の検討
などとある。特に目玉となるのは「単線での新幹線整備」である。フル規格の6~8割程度のコストでの整備が考えられている。
また。新幹線の整備効果として、交通網としての強靭性(災害に強いか)や、誘発需要の見積もり方なども書かれていて、その検討具合としては分かりやすいといえよう。
そしてケーススタディとして挙げられているのが、名前こそ上がっていないが「四国新幹線」「四国横断新幹線」であろうと言われている。大体その構想内容が一致する距離感で描かれているからである。
次に②について。要はスピードアップのことである。整備新幹線は最高速度が260㎞/hと限られており、更にその運営方式がJR直営ではなく、上下分離方式のために自ら改造ができない。
そこでJR東日本は盛岡~新青森間でスピードアップ工事を実施し、320km運転を行えるようにする。そして北海道新幹線も320km対応を予定している。青函トンネルでのスピードアップも含めれば東京札幌間が5時間台はおろか4時間40分少々という時間で結べるという計算になる。東北新幹線のスピードアップが北海道新幹線の開業に数年先立つ2028年頃の完了という形になる。(ニュースリリース)
(その先の360㎞運転についてはもっと先と言えるので割愛)
またこちらは既設の新幹線であるが、上越新幹線も275㎞対応が予定されている(実は現行240㎞が最高速度である)。こちらは2023年頃に工事が完了する見込みである。(ニュースリリース)
九州・北陸新幹線ではどうするのか。これらは300kmスピードアップをするのかどうか、今のところそのような噂さえ出ない。果たしてどうするのか、これらは整備新幹線計画の続きとしてどうなるかを考えねばならぬところである。
東海道新幹線は現状これ以上のテコ入れはないだろうと言える。つまり、本数を増やすことが使命になっていること、これでも既に開業時から75kmのスピードアップを実施していること、中央リニア新幹線の計画に注力すること、他の新幹線に比べて線形が悪いことを考慮してそういえる。
山陽新幹線はどうであろうか。こちらも今のところスピードアップを考える段階にはなさそうである。
更には並行在来線問題や、地域交通体系の再編も考えられていくべきところである(例えば富山駅など)。それらも「幹線鉄道ネットワーク等のあり方に関する調査について」を読めば思索にふけられると言える。
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