鉄道事業許可にまつわるあれこれ

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鉄道事業法によれば鉄道事業許可の区分は以下の3つになる。

「第一種鉄道事業」:自らが保有する線路で、自ら旅客・貨物を運送する。線路容量に余裕があれば第二種鉄道事業者に線路を使用させることが出来る
「第二種鉄道事業」:他人が保有する線路で、旅客・貨物を運送する
「第三種鉄道事業」:第一種鉄道事業者に譲渡する目的で鉄道線路を敷設し、または鉄道線路を敷設して第二種鉄道事業者に使用させる

というわけである。例えば阪神電気鉄道は(阪神電気)本線の第一種鉄道事業者、なんば線(西九条~難波)の第二種鉄道事業者である。西大阪高速鉄道が第三種鉄道事業者となっている。

色々四方山話的なことを列挙。

①第一種鉄道事業者の線路を使う第二種鉄道事業者

一般的には第二種鉄道事業者は第三種~から線路を借り受けているケースが多い。他方で、第一種鉄道事業者は余裕があれば第二種鉄道事業者に線路を使わせることができる。そのような例は(JR貨物を除けば)6例ある。そのような場合には「他社線への直通運転」ではなく、「線路を共有している」状態であるので注意されたい。

1.北総鉄道の線路を使う京成電鉄(成田空港線)
京成高砂~小室間が該当する。では小室~成田空港間はどうかといえば、3社の第三種鉄道事業者がそれぞれ持っている。
2.東京メトロの線路を使う東京都交通局(三田線)
白金高輪~目黒間が該当する。
3.JR東海の線路を使う東海交通事業(城北線)
ここも歴史的経緯がある。貨物線のために建設された線路であるため、JR東海が承継したが、子会社に運行を任せている。そのため、JR東海としては列車を運行していない。
4.JR西日本の線路を使うのと鉄道(七尾線)
七尾~和倉温泉間が該当する。なお、和倉温泉~輪島間もJR西日本が第三種鉄道事業者となっている。こちらは七尾線の一部区間を当時輪島線を運営していたのと鉄道の経営に分離したことが始まりである。JRの特急列車が和倉温泉まで乗り入れ、のと鉄道の普通列車が七尾発着となる。
5.JR西日本の線路を使う嵯峨野観光鉄道
一般的にはJR西日本が旧線を廃止し、しばらくして嵯峨野観光鉄道ができたとされているが、嵯峨野観光鉄道線も未だ山陰本線のままではある。
6.JR西日本の線路を使う井原鉄道
総社~清音間が該当。一般的に三セクの車両ががJRの線路に乗り入れる場合は「直通列車」であり、JR区間はJRの運賃や企画乗車券で乗車可能である。しかし、本区間の井原線列車はは井原鉄道が運営しているのであり、JRへの乗り入れというわけではないから、JRの企画乗車券(例えば青春18きっぷ)では使えない。正確な経緯は不明も、鉄道敷設法別表90号の2「岡山県総社附近ヨリ広島県神辺ニ至ル鉄道」がその由来と思われる(昭和28年の改正で追加)。

②特定目的鉄道

特定目的鉄道というものがある。一般の鉄道は採算性・安全性・継続性・事業遂行能力が審査基準である。一方で特定目的鉄道は安全性・事業遂行能力だけでよいとされている。その意味合いは、特定目的鉄道が「景観の鑑賞、遊戯施設への移動その他の観光の目的を有する旅客の運送を専ら行うもの」とであるために、採算が取れる必要が必ずしもない。そのため、審査基準が緩和されるほか、手続きも一部省略できる。
その第一号は平成筑豊鉄道の門司港レトロ観光線である。なお、嵯峨野観光鉄道や黒部峡谷鉄道は同制度の成立前である。

③期間限定の許可

鉄道事業法3条4項で「一時的な需要のための鉄道事業の許可は、期間を限定して行うことができる。」とある(これも手続きが緩和される)。その例を網羅するのは難しいが、探せば結構ある。
例えば、奥羽本線(秋田港線)がこれに当たる(リリース)。

④鉄道運輸機構が関わる場合

鉄道運輸機構は線路を鉄道事業者に貸し付けている場合がある。整備新幹線の場合と、東急・相鉄の新横浜線があたる。この場合、JR各社や東急・相鉄は第二種鉄道事業者に当たりそうに見えるが、鉄道事業法59条2項によって各社は第一種鉄道事業者として扱われる。

また、整備新幹線の場合、JRが鉄道事業許可を受けて行うのではなく、あくまで国土交通大臣の指示をもって建設されるというものであるため、これも法令上の手当がなされている(全国新幹線鉄道整備法14条1項,2項)