国内線航空 ダイヤ調整実は一部適法?
国土交通省の「国内航空のあり方に関する有識者会議」において、ダイヤ調整が認められる余地がある旨が述べられていた。
第3回国内航空のあり方に関する有識者会議 (公正取引委員会説明資料)
国内線は、鉄道に比べて収益の回復が遅れていて、結構大変なことになっていることは、読者諸兄もご存じだろう。国内線の旅客数がふえていても、収益が立たないという状況である(第1回資料)。一方で、同じような時刻に発着するダイヤでの運行により、お互いにじり貧になっているということは、事業者からも指摘されている(JAL)。5分続行でJALとANAが飛んでいる例はよくご覧になるだろう。そのことである。
これを事業者間で調整すればいいのかと言われればそういうことでもない。独占禁止法が絡んでくるのである。
カルテルは、不当な取引制限として独占禁止法3条で禁止されている行為である。その定義は、「事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること(同法2条6項)」である。一般的な社会経済であれば、調整させないほうがいいことも多いだろう。なお、あくまで、事業者間の競争を制限するものだけが規制の対象であり、標準規格の策定などは、カルテルにはあたらない(ほかの問題は生じる可能性はある)。
しかし、例外規定を設けているものがある。対価決定=運賃やダイヤ、運行区間の調整については、独禁法特例法で、バス・鉄道・船舶(地域交通法の対象となるもの)では認められている。そのほうが地域交通に望ましいという判断である。有名なものでは牟岐線や山田線、広電がその例である。
一方で、航空については地域交通法の対象になっていないため、独禁法特例法が及ばない。もっとも、航空法110条1号で、「航空輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる本邦内の各地間の路線において地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため」の協定が認められている。これは特に離島路線を念頭においたものである。しかし、航空法110条に基づく協定の締結例はない。
そこで、独占禁止法を所管する公正取引委員会として、「一般に、運賃・料金、運航便数及び運航路線等競争手段に関する制限を伴わない協定は、原則として独占禁止法上問題とはならない。」、さらに踏み込んで、「運航時刻(ダイヤ)のみを調整する協定」でも、運賃・便数の制限を伴わず、利用者(需要者)の利益を害さず、特定の事業者を差別せず、遵守の強制がなければ、独占禁止法上適法であると述べた。そのほか、運行路線の自主撤退と協定による撤退の区別、コードシェアについても述べている。
独占禁止法上、離脱可能な協定(損害賠償などの強制力を置かない、放棄するもの?)は適法といったが、しかし、鉄道とバスの運賃プールやダイヤ調整などといったことについては、やはり個別の立法を要することになる。事業者からは、独禁法特例法での対処が望まれるかもしれない。
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