所謂「米原ルート」への疑問
過去にメモを作っていたので、それを流しておこう。
全体として
・そもそも小浜京都ルートで政治的解決したのではないのか。それを覆すことが、当然であるのか。
…って言ってたんですけど、京都市が不思議なことを言い始めたもので…
着工5要件・その他の手続について
着工5要件は以下の通りである。
1.安定的な財源見通しの確保
2.収支採算性
3.投資効果
4.営業主体であるJRの同意
5.並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意
(国土交通省HP https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000041.html より引用)
・米原ルートが工期が短縮できると言う人がいるが、既に実施中の環境アセスメントの分ごと巻くだけの工期になるのか。
※環境アセスメントに関連する手続きにかかる時間はその内容にもよるものの、3~4年はかかるものと見込まれる(なお、小浜京都ルートについては令和元年11月に「方法書」の公表が行われており、令和7年の記事執筆時点でも進行中となっている。)。そのほか、ルート選定などの手続きが別途必要である。2016年の国交省の調査(リンク)では小浜京都ルートは15年、米原ルートは10年と5年差である。2024年のJRTTの調査(リンク)を踏まえると、小浜京都ルートは25年程度かかるとされている。もっとも期間延長の理由は米原ルートであっても共通する事項が多く、結局開業までの期間短縮にはならない。
・米原ルートは費用対効果で京都小浜ルートに勝るのか。乗り換えにより便益が減ることや、米原駅での接続方法によっては費用の高騰が考えられる。
※そもそも米原駅での乗り換えについて生じるのかどうかということ自体、「米原ルート」の中で見解が統一されていないように見える。特に、上記国土交通省の調査は米原駅では乗り換えになることを前提にしているように思われる。
・現行スキームだと滋賀県に負担を求めることになるが、受容する蓋然性があるか。
※ここにいう負担は貸付料を除いた建設費1/3を県・市町村で負担すること、及び並行在来線となるべき区間の経営分離である。
・並行在来線となる北陸本線の経営分離はどうなるか。そもそも滋賀県が同意しなければ着工認可されることはない。
※経営分離自体は、第三セクター化でもバス転換でもよい。なお、仮定の問題として北陸線(米原~近江塩津間)の輸送密度は特急込みで1.1万人程度であり、並行在来線としてJRが経営分離を求めるかどうかといえば、求めるものであろうと考えられる(データでみるJR西日本参照)。
乗り入れ方式について
・米原ルートは米原で打ち止めなのか、東海道新幹線に乗り入れるのか、米原新大阪間を新設するのか。どれを指しているかがよく分かっていない。
※恐らく前2者を指すものが多いと思われる。もっとも、全国新幹線鉄道整備法上の「基本計画」として、北陸・中京新幹線(敦賀市~名古屋市間:運輸省告示)が存在していることに留意する必要がある。
・米原止めであるとすれば、東海道新幹線や在来線との接続をどうするのか。米原大阪間在来線では速達効果は全く見込めない。
※比喩的に言えば「今の敦賀乗り換えが米原乗り換えになるだけ」である。米原ルート論者は名古屋方面との接続、連絡を意識しているのであろうが、そうだとすると対面乗り換えにするのは困難を伴う。
また、後段については、米原新大阪間の新快速は1時間18分掛かっている。新幹線では26分である。
・東海道新幹線への乗り入れであるならば、リニア開業後としてもダイヤに余裕があると言えるのか。これは平常時のダイヤはともかくとして、ただでさえ雪が多い米原駅でのダイヤ乱れ時に各方面の旅客を適切に捌くオペレーションができるのかということでもある。
※リニア開業前でも毎時5本程度スジに余裕がある旨主張する論者がいる(鵜飼基地~新大阪間を複々線化すれば乗り入れが可能であるとする論者もいる)。しかし、北陸新幹線のダイヤが東海道新幹線に完全に制約されることとなることに対しての懸念が全く足らないと言わざるを得ない。また、リニア全線開業後だとしても、山陽新幹線からの利用者が全てリニアに転化するわけではないのだから、一定程度「のぞみ」相当スジは残るものといえる。また、それこそダイヤの余裕が生まれたことをみて「こだま」「ひかり」の増強に回すことは当然考えられる。
東海道新幹線の関ケ原越えは大雪対策として、ダイヤ乱れの影響を最小限に抑えるために米原・岐阜羽島駅での留め置きなどを想定している配線となっている。そこに北陸新幹線からの直通を加えることが現実的であるのだろうか(すなわちダイヤの回復困難性を上げ、かつ北陸新幹線・東海道新幹線両方にとって便益を下げることになる)。
・東海道新幹線乗り入れの場合、車両はどうするのか。電圧方式の違いや最高速度などの違いについて、そもそも技術的に可能なのか疑問であるし、可能だとしても製造費用は跳ね上がる(跳ね上がった負担は自治体やJR、国に跳ね返る)。
※まずN700Sについては最高速度285,300km/h(それぞれ東海道・山陽)、電気方式は25000V・60Hz、加速度は2.6km/h/s(参考:日本車両・JR東海)である。W7については最高速度260km/h(車両性能は275km/h)、電気方式は25000V・50/60Hz、加速度は1.6km/h/s(参考:公社プレストレストコンクリート工学会)である。そ海道新幹線乗り入れの場合、車両はどうするのか。電圧方式の違いや最高速度などの違いについて、そもそも技術的に可能なのか疑問であるし、可能だとしても製造費用は跳ね上がる(跳ね上がった負担は自治体やJR、国に跳ね返る)。単にW7系が劣っていると見るのは誤りであり、30‰区間への対応などが含まれていることに留意されたい。そのうえで東海道新幹線・北陸新幹線両方に対応した車両を新造するのであれば、そのためにスペックを上げることになる(また既存車両についても設備投資が含まれるであろう)。また保安設備等についても違いがある。こういうことを言うと、技術的な課題で言い訳をしても意味がないという反論が出るが、例えば保安設備の将来的な更新・改善を加えることは当然あるわけで、そうだとするとJRとしてその車両側の対応が増えることになることまで見越して反対している(比喩的な言い方では「技術的には可能」)というべきであろう。
・米原大阪間新造の場合、二重投資にならないか。
※全線を複々線化する必要がなく、大半は東海道新幹線と共用すればよいという論者も居る。その間の線路切替工事などの影響を無視しているのではないか(既に東海道新幹線が運行しているという経路依存性を無視しているのではないか)と言わざるを得ない。
・京都小浜ルートの場合、国土における幹線網を俯瞰したときに嶺北地域を取り込めるメリットがあるにもかかわらず、それを上回るのだろうか。
※この点は、全国新幹線鉄道整備法に内在する問題である。国土計画上必要かどうかということと、地元自治体の賛否が必ず一致するわけではないということである。東北新幹線などであればわかりやすいが、新幹線が当該都道府県を通ることにより便益を得る、という状態ではない自治体が出得る構造になっている(例えば佐賀県や京都府などはその例であろう)。
※基本計画路線である北陸・中京新幹線との
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